地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2016年04月号 vol.2(4)

「事例から学ぶ疫学入門」第7回:危険を伴う業務に従事する人は長生き?-健康労働者効果を考える-

2016年04月01日 01:06 by syuichiao
2016年04月01日 01:06 by syuichiao

 一般的には、危険を伴う業務に従事する人は、疾病や死亡のリスクが高まると考えられるでしょう。例えば、原子力発電所に勤務している従業員では、発がんのリスクが高くなったり、死亡のリスクだって、高いのではないか、そんなふうに思うことはないでしょうか。

 ところが、15か国の原子力産業に従事する人と、一般人口集団の発がんリスク、死亡リスクを比較すると、なんと原子力産業に従事する人の方が、そのリスクが低いというデータがあります。(図1)これはどういうことでしょうか。

(図1)Fornalski KW.et.al. 2010 7PMID: 20585442より引用

※SMR:tandardized mortality rate標準化死亡比

 また、別な例を挙げると、電気工事士(電気技師)は高所での作業や感電リスクを伴う作業に従事するわけですから、やはり一般の人よりも疾病や死亡のリスクが高い印象があります。しかし、デンマークで行われた電気工事士と死亡率の検討では、一般人口集団よりも統計的にも有意に低いという結果になっています。(死亡の発生率比0.60[95%信頼区間 0.520.69]) Thygesen LC.et.al. 2011.PMID: 21767353

 原子力産業はとても安全な業種であり、長生きするような健康メリットがあるとはとても思えませんし、電気工事士が一般集団よりも死亡率が低いからといって安全な業種だと結論できるものなのでしょうか。

[事例]

 危険な業種に関わる人たちの中には、一般の人よりも長生きというデータがありますが、いったいどういう事なのでしょうか?

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