ホント、暑い夏ですね。これを書いているのはお盆ですが、皆様が読まれる頃もまだまだ残暑厳しい頃かと思います。あんまり暑いとそれだけでイライラして不機嫌になったりするもので、それが連日続くと発狂しそうになりますよね。
でも、暑いと実際に精神的な不調を起こしたりするのでしょうか?
熱中症などで死亡するリスクは気温が高くなると上昇する……というのは調べるまでもなく当然のことではありますが、その他の身体疾患も増えたりするのでしょうか?
米国の医学論文データベースであるPubMedで検索してみますと、次の論文がヒットしました。
1. Kim CT, Lim YH, Woodward A, Kim H. Heat-attributable deaths between 1992 and 2009 in Seoul, South Korea. PLoS One. 2015 Feb 18;10(2):e0118577. PubMed PMID: 25692296
日本と気候やライフスタイルなどの条件が比較的近い韓国のソウルにおけるコホート研究です。1992年から2009年までの間の最高気温のうち下から90%までを閾値とし、様々な疾患による死亡が閾値以下と以上で異なるかを統計学的に解析したものになります。具体的には、閾値(この研究では29.5℃)以下の死亡リスクを基準として、それ以上の気温では1℃上昇するごとに死亡リスクが何倍になるかで結果を示しています。
それによりますと、総死亡リスクは最高気温が1℃上昇するごとに1.03倍(95%CI: 1.02-1.03)高くなることが示されました。1℃ごとに3%の死亡リスクの上昇というと、高いと感じるでしょうか、そうでもないと感じるでしょうか、いろいろ捉え方がある数字かと思います。
さて、その内訳をもう少し見ていくと、事故が1.03倍(95%CI: 1.02-1.04)、心血管疾患が1.04倍(95%CI: 1.03-1.04)、と統計学的に有意にリスクが増加しており、なるほどなぁと思わせるのですが、「精神と行動の障害」も1.04倍(95%CI: 1.01-1.07)と高くなっているのが目に留まります。一瞬、暑さで精神疾患になって死ぬことがあるの!?と思ってしまいましたが、よく見るとその数字を引っ張っているのは「向精神薬の乱用」であってそれが1.07倍(95%CI: 1.02-1.13)の死亡リスクを示しています。ちなみに「自傷」は暑くなると減るんですね(0.97倍)。ちょっと意外です。
他にもいくつかエビデンスを検索してみましたが、ちょっと「暑さで精神疾患になる」というような報告は見つけることができませんでした。しかし、上記報告のように、暑さは精神疾患に何らかの影響を与えることはありそうです。また、精神科病院の現場にいる者の感覚としては「季節の変わり目」などで調子を崩す患者さんは多いと感じています。
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