地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2016年12月号 vol.2(12)

抗精神病薬による体重増加にはどう対応したら良いですか?

2016年11月22日 12:49 by 89089314
2016年11月22日 12:49 by 89089314
 抗精神病薬というのは、もともとは統合失調症などで現れる幻覚や妄想のような、いわゆる精神病症状を改善するための薬です。興奮を抑えて気分を落ち着かせる鎮静作用もあるので、トランキライザー、つまり精神安定剤と呼ばれることもありますが、ここでは抗精神病薬に統一して表記しましょう。

 抗精神病薬と言うと、何やら恐ろしげな印象を持たれる方もいますけど、実際には古くから非常に広く用いられている薬で、幻覚や妄想以外にも、双極性障害の躁病相のような興奮の強い状態に対して、それを落ち着かせるために使うこともありますし、うつ病に対して抗うつ薬の効果を増強させるために使うこともあります。神経症や恐怖症に対して気持ちを落ち着かせるために使うこともありますし、頑固な不眠に対して睡眠を導入するために使うこともあります。そして認知症のために徘徊や暴力が出る方や自閉症のために強い興奮や攻撃性を示す方に対して、それらを和らげるために抗精神病薬を使うこともあります。

 そんな抗精神病薬ですが、実に非常にたくさんの種類があるんですね。似通ったグループはありますが、それぞれ異なる特徴を有しています。そして用量によっても効果が変わってきたりするんですね。例えばスルピリドっていう抗精神病薬は1日150mg程度までなら胃薬ですが、300mg前後ならうつ病に効きますし、600mg以上になると幻覚妄想状態に効きます。さらに薬剤によって鎮静作用の強さは大きく変わりますし、副作用の傾向も違います。
 なので、抗精神病薬を使い分けるのは、とても奥が深い話なんです。
 
 とはいえ、ある程度共通して注意すべき副作用はあります。その代表は錐体外路症状、あるいはパーキンソニズムと呼ばれる症状です。
 抗精神病薬は、脳内においてドパミンを神経伝達物質とする神経の伝達を遮断するので、簡単に言えば、ドパミン神経系が機能しない状態=パーキンソン病と同じような状態(手の振戦、筋肉のこわばり、無表情、歩行困難など)を引き起こします。
 パーキンソニズムは、ドパミン神経が相対的にアセチルコリン神経より機能低下すると起きますので、抗コリン薬を併用するか、抗コリン作用の強い抗精神病薬を使うことである程度防げます。しかし、それでも抗精神病薬の用量を上げればどの薬でも現れますし、そもそも抗コリン作用によって口渇や便秘、認知機能障害などの副作用も現れやすくなります。

 そこで、錐体外路系の副作用を起こしにくい抗精神病薬として開発されたのが、「第二世代抗精神病薬」または「非定型抗精神病薬」というものなのですが、これらの薬では体重増加や脂質・糖代謝異常といったメタボリックな副作用が目立っています。こういった副作用に対抗する術はあるのでしょうか。今回はそれを少しだけ探ってみます。

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