地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2016年05月号 vol.2(5)

「事例から学ぶ疫学入門」第8回:予防的薬剤効果の実効性を探る

2016年04月24日 13:43 by syuichiao

[薬の効果をどう記述する?]

 薬の効果といっても様々ですが、今回は高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの慢性疾患に用いられる薬の効果について考えていきます。慢性疾患に用いる薬剤は、将来的に起こりうる心臓病などや脳卒中などの合併症を予防し、さらに寿命を延ばすために薬を飲むわけです。いわゆる臨床疫学では、その定量的な指標として、薬を飲まなかった場合に比べてどの程度、心臓病や脳卒中、心臓病による死亡が減るか、ということを相対比で示すことが一般的です。

 例えば、慢性疾患治療薬でも代表的なスタチン系薬剤について具体的にみていきます。スタチン系薬剤はコレステロールを下げる働きがあり、脂質異常症に用いる薬剤ですが、単にコレステロール値を下げるだけではなく、心臓病やそれによる死亡をどれだけ減らせるか、という予防的薬剤効果が重要です。

 ある研究によるとスタチン系薬剤は、プラセボもしくはスタチン系薬剤以外の治療法に比べて、心血管疾患(心臓病)による死亡を11%減らすと報告されています。(相対危険0.89[95%信頼区間0.81~0.98])[Mills EJ.et.al.2008]

(図1)スタチンによる心臓病死亡抑制効果:[Mills EJ.et.al.2008より引用]

 (図1)はフォレストプロットと呼ばれるものですが、複数の疫学的研究を統合して解析したものです。研究間で多少ばらつきは在りますが、全体として心臓病による死亡は11%、統計学的にも有意に減るという結果になっています。しかし、統計学的有意に11%減ると言っても、いまいち実感がわきません。「心臓病により死亡する」というのは、起こるのか、起こらないのか二値的な問題で11%死にかけているという状態はあり得ませんよね。いったいどういうことなのでしょうか。

[事例]

スタチン系薬剤のような慢性疾患用薬で心臓病による死亡が〇〇%減る、とはどういう事なのでしょうか。

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