医療は人を癒せるのだろうか。例えば、病気の早期発見が”正しい医療のあり方である”、というような考え方は、「医療が人を癒すものである」という前提の上に成り立っている。こういった考え方が一般的というのであれば、多くの人が”医療は人を癒すもの”と考えているのかもしれない。身体的な不条理から解放してくれるであろう可能性を有する医療は、心身共に癒しを与えてくれるはずだと、しばしばそのような信念を抱いていることは自明のようにも思える。
本稿では、医療の対象となる事態そのものに焦点を当て、医療に癒しを求めるその構造を考察する。そして医療が僕たちに何をもたらすのか、「医療化」という概念を用いて検討し、その帰結がある種の差別的なものであることを示そう。そのうえで、医療における価値判断に必要な原理とは何か、筆者の愚見を述べたい。
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