[著者]
医療法人社団 徳仁会 中野病院 薬局 青島周一
[抄録]
薬剤効果の記述をめぐり、例えば、薬理学的作用機序(理論)に基づく合理主義的な考え方と、臨床疫学的知見(現象)に基づく経験主義的な考え方が存在するが、そのいずれを重視すべきか、時に対立を起こすこともあるだろう。疫学的研究が示唆するように、「薬剤効果」という認識は経験的に理論とは独立に把握できる側面を有する。しかしながら、当たり前ではあるが、ヒトはあらゆる薬剤効果を経験することはできない。不測の事実に対処するために理論は薬剤効果を思考するうえで有効な場合もあり得る。
本稿ではこうした薬剤効果の記述をめぐる対立の根源的な構造を相対化するために、薬剤効果の構成的実在論という立場を提唱する。構成的実在論は薬剤の効果という客観的実在を認めたうえで、我々が記述しうる薬剤効果は常に訂正可能性を持つということを浮き彫りにさせる。
読者コメント