地域医療ジャーナル

2017年07月号 vol.3(7)

シリコン・バレーのIT長者たちが血道をあげる「若返りの妙薬」

2017年06月21日 08:36 by spitzibara

 先日、親切な友人がやってきて、目を輝かせながら大きな紙袋を差し出して言いました。

「最近これが身体にいいって流行っとるんじゃけと、知っとった?」

「えー、なに、なに?」

 ずしりと重い紙袋を受け取って覗くと、中に入っていたのは大量の缶入り甘酒。私も毎日スーパーに買い物に行く主婦とて、どんどん拡大を続ける賑やかな甘酒コーナーを見ていりゃ、流行っているなと気づかないわけでもありません。でも、考えたことはちょっとひねくれていて、なるほど発酵食品路線は塩麹の次には甘酒と打って出たか……。

 だって、そんなの、科学やテクノロジーとつるんだ利権構造が、人の身体も能力も命だって今やいかようにも操作・コントロールが可能だぁ!みたいに”科学とテクノで簡単解決バンザイ”文化や”コントロール幻想”を広げては、人々の欲望を掘り起こし、次々に新たなブームを作りマーケットを創出していく手口じゃん?……というのがspitzibaraの持論。

 とはいえ、私だっていい年をしたオトナですから、友人の好意にそんな理屈で報いてはならない、くらいの分別はあります。

「わぁ ありがとう! 私、甘酒なんて子どもの頃に飲んだきりじゃわー」

「うふ。なんせ『飲む点滴』って言われとってね、身体にいいって聞くから、うちは夫婦で毎日飲んどるんよ。よかったら飲んでみて」

「へぇ、毎日飲んどるんじゃ。で、どう? 続けて飲んどると、やっぱ身体にいいみたい?」

「え……?」  

 そこで友人は一瞬びっくりした顔になりました。そんなの、考えたこともなかったのかもしれません。ちょっと思案してから、「いや、あんまり変わらんけど……」とつぶやくので、悪いことを訊いてしまったようで、私は慌てて会話を締めくくりました。

「じゃぁ、さっそく飲んでみるね。こんなにたくさん、ありがとう!」

『飲む点滴』と聞けば、友達にも飲ませてあげたいと思ってくれる一方で、実際に飲んで自分の身体で効果が実感できるかどうかは二の次だったらしい友人が、微笑ましく思えた瞬間でした。

 もちろんマーケットとしては決して侮れない規模にもなるのでしょうけれど、こうして私たち庶民が塩麹だ甘酒だ水素水だとノセられては次から次へとブームを追いかける図なんて、たとえば例のクライオニクスと比べれば、いっそ可愛らしいくらいのもんでしょう。この世の中には、自分の遺体を冷凍保存してもらえば、いつの日かよみがえることができるとマジで夢見る人がいるし、現実にそれを当て込んだショーバイが立派に成り立っているのですから。

  クライオニクス商法について知った時にも、思わず「マジかよ?」とつぶやいたものですが、友人からもらった大量の甘酒をちびりちびりと消費しているさなかに、またも「マジかよ?」とつぶやいてしまうニュースに出くわしました。今度は、シリコン・バレーのIT長者たちが興味津々だというアンチ・エイジングの新提案。

 若者の血を輸血して、さぁ若返ろう! ……って。マジかよ。吸血鬼なのかよ……。

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