地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2017年08月号 vol.3(8)

不眠症に漢方薬は有効ですか?

2017年07月21日 09:29 by ph_minimal
2017年07月21日 09:29 by ph_minimal

 前回はベンゾジアゼピン系薬剤(BZD)の減薬について取り上げましたが(7月号の記事「ベンゾジアゼピン系薬剤を中止するときの漸減の目安は?」参照)、今月号では不眠症の治療におけるBZDの代替薬について調べてみたいと思います。

 BZDの漫然長期投与について警笛が鳴らされていますが、たとえばBZDを飲むことで睡眠を確保できている(あるいは"そう思い込んでいる")患者さんにとっては、長い間、愛用してきた薬を「長期間つづけるのは良くないので卒業しましょう!」と言われても、「はい!じゃあ飲むのをやめます!」とはなりませんよね。「眠剤(BZD)を飲まないと一睡もできない!」と訴える患者さんは思いのほか多いのではないでしょうか。そのような患者さんはおそらくこう思うことでしょう。

「他に何か良い薬はないの?」と。

 実際、患者さんからこのように聞かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。"薬を飲んで眠る"のを何年も続けていると、"何も飲まずに眠る"というのはハードルが高いような気がします。大げさかもしれませんが、"薬を飲んでから床に就く"という行為そのものが眠りにつくための重要な儀式になっている傾向もあるかもしれません。薬を飲まないと、こりゃあ眠れないんじゃなかろうか…と不安になって、ますます眠れなくなったりして…。そのお気持ちはとても良くわかります。

 私の場合、某コンビニのアイスコーヒーを飲まないと一日が始まりません。職場に到着しても何もできないですし、自宅で論文を読んで原稿を書こうと思っても、頭の中は「ザーッ」と砂嵐のまま…。アイスコーヒー無しで仕事をするのはチューニングをしないでギターを弾くようなものですね(私、ギター弾けませんので想像ですが…)。あるいは、もしかしたら、ただ単に「コーヒーを飲まないと頭が冴えない」と思い込んでいるだけで、実際、アイスコーヒーを飲んで、さあやるぞ!と思っても、実は何も変わっていないという可能性も…。プラセボ効果でなんとなくやる気がでているだけかもしれないと思いながらも、美味しいので飲んでいるというのが実情です。

 たった今、私がアイスコーヒーを飲んでいるということもあり、ついコーヒーの話に脱線してしまいましたが(コーヒーで頭が冴えきっているはずなのに脱線)、不眠症に対してもプラセボ効果はある程度期待できるのではいか思っています。だからといって、患者さんに処方する眠剤をこっそりプラセボにすりかえるわけにもいきませんので、悩ましいところですね。プラセボで眠れるならそれにこしたことはないと思うのですが…。

「他に何か良い薬はないの?」という患者さんの質問・要望に対して、プラセボを!というのは現実的ではないため、代替薬を検討することになると思います。

 個人的に気になっているのは漢方薬です。不眠症の効能を有する漢方薬がいくつかありますが、どの程度効くのか検討した研究はあるのでしょうか。なにか有用な漢方薬があれば、そちらにスイッチするのも選択肢のひとつになると思いますので、BZD卒業に補助的に使えそうな漢方薬はないか調べて見ましょう!

 ※BZD以外の不眠症治療薬として、オレキシン受容体拮抗薬のスボレキサントやメラトニン作動薬のラメルテオンなどもありますが、今回は漢方薬に焦点をあてて考察したいと思います。

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