心血管アウトカムに対するスタチン系薬剤は、一次予防、二次予防ともにその有用性が広く認められている薬剤である。[1]~[8] これまでに報告されているエビデンスという観点からすれば、多くの慢性疾患用薬の有効性がそれほど顕著なものでない中で、スタチン系薬剤は一貫してそのベネフィットが示されている数少ない薬剤と言えるだろう。
本稿では、まず薬剤効果に関して、相対危険、絶対危険減少、治療必要数(NNT Number needed to treat;以下NNT)という3つの指標を整理する。次に臨床的に有用性が高いと評価されることが多いスタチン系薬剤の治療効果をNTTから俯瞰する。そのうえでNNTという指標の解釈困難性を示し、かわりに延命日数という観点から考察を加え、その背景に潜む薬剤効果の不平等性を明らかにする。一連の考察の中で、実臨床では有用な薬剤といわれるようなスタチン系薬剤でさえも、その有用性を報告したエビデンスに冷酷さをまとっていることが明らかになろう。最後に薬剤の個別性という概念を提示し、冷酷なエビデンスとの向き合い方について論じてみたい。
読者コメント
kyamagoshi
一般公開 エビデンスそのものが製薬企業のバイアスに汚染されていること...