8月末、メリーランド州の訴訟をめぐって、ちょっと面白いニュースが目に付きました。「母乳育児とミルク育児、どちらがよいか」という論争は、私が娘を生んだ30年前にもありましたが、米国でも今なお続いているようです。
子どもが生まれた直後に別れたカップルが争った訴訟です。母親のアンバー・ブラウンさん(27)はWHOが母乳育児を推奨していることもあって、自分は完全母乳育児でいく、との方針を堅持しています。ただ、よくあることですが、母乳がたっぷり出るというタイプではないそうです。そのため、二人が別れる際に、父親のコリー・ドンタ・ルイスさんはアンバーさんから、翌朝までの母乳を搾って持たせることはできないから、この子はそっちに泊まらせるわけにはいかないわよ、と言い渡されてしまいます。でも自分だって我が子とゆっくり過ごしたいんだ、ミルク育児を認めてくれろ、と主張する父親と、何を言うか、この子の主治医の小児科医だってミルクはならんと言っている、と譲らない母親とが、問題を裁判所に持ち込んで真っ向からぶつかりました。
そして、2人の女性判事が出した裁定は、「父親にミルク瓶を」。
もちろん、この訴訟での「完全母乳育児」は女性側が親権をめぐる争いの武器として使っているに過ぎませんが、それを織り込んだ上で、私が読んだ2つの記事がそれぞれ女性の立場から正反対の反応を示しているのが、またとても興味深く思えました。判決を批判する記事の主張するところは、「私たちは、自分の子どもには自分のニーズに合ったやり方で授乳する女性の選択を強く提唱する立場です」という最初の一文に集約されているように思います。一方、判決を支持するワシントン・ポスト紙の記事タイトルは「母乳よりも大事なもの? それは父親に我が子との時間をあげること」。記事の中にある、There is more to an infant’s life than food.(赤ん坊の生活は食の問題だけに留まらない)という一文が、「母乳かミルクか」のエビデンスだけを喧々諤々することの視野狭窄を鮮やかに浮き彫りにしている、と感じました。
どちらの記事にも「なるほど~」と感心しながら、そういえば母乳論争って私が娘を生んだ30年前にもあったよなぁ、と思い出したので、あの論争は日本ではどうなったんだろう……と、ざっとネットで検索してみました。
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