0.はじめに
今月はスピンオフ企画「冷酷なエビデンス」なんだそうです。読者の皆様はこの言葉を聞いてピンと来ますか?そもそも「エビデンスは冷たいのか温かいのか」みたいなテーマを考える人ってやはりセンスがあるなあと感心してしまったわけですが。エビデンスって単純に言えば「確率的な情報」のことですよね?やはり無機質なものである気がしますし、「それってエビデンス無いよね?」などと巷で語られる語り口にはとても冷たい印象を持っています。でもエビデンスの使い方ってそんなもんなんでしょうか?
今回は半世紀弱使用されてきたダーゼンⓇの販売中止を振り返りながら、「冷酷なエビデンス」について一緒に考えて行きたいと思います。
1.ある日のひとこま
**********こんなことを経験しました**********
研修医「先生、昔のカルテ見てたらダーゼンⓇって薬が処方されてたんですけど、あれって何すか?」
私(指導医)「おお、ダーゼンⓇ!懐かしいなあ。風邪で痰が絡む人とかによく出してたよ。」
研修医「あ、そうなんですね。俺使ったことないっす。」
私(指導医)「そりゃあ、そうだよ。だって発売中止なんだから。確か2011年だったかな」
研修医「え?なんで販売中止なんですか?」
私(指導医)「なんだか効果が証明されなかったんだってさ。気管支炎とかね・・・」
研修医「へ〜。効果が証明されなかったら発売中止じゃ、実際そんな薬ばっかりですよねえ?」
私(指導医)「むむむ・・・」
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2023年3月号 vol.9(3)
「世界なんて簡単に変わるはずがない」 多くの人は疑いようのない事実だと考えてい…
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