ポリファーマシーという言葉も広く世間に認識されてきたように感じています。控えめに言っても過剰処方であるとか、多剤併用という言葉に問題意識を持つ人は、医療者のみならず、一般の方も含めて多いのではないでしょうか。
ポリファーマシーとは、端的に言えば多剤併用薬剤をめぐる問題群と言えそうでが、では一体どの程度の薬剤が併用されていればポリファーマシーと言えるのでしょうか。あるいはどの程度減薬すればポリファーマシーを解消したことになるでしょうか。こうした問いの立て方にこそ問題があるように思いますけど、多剤併用というだけに併用されている薬剤数に関心が集まるのはもっともだと思います。
以前、「ポリファーマシーをめぐる問題とヘルスリテラシー」という記事で、薬剤数が多いことは不適切な薬物治療なのか、というテーマを考察しました。薬剤数と予後悪化の関係は因果関係なのか、と問われれば、必ずしもそうではない可能性が垣間見えてきます。薬をたくさん飲んでいる人は、それだけ多くの疾患を抱えているということ(これをマルチモビディティと呼びます)であり、裏を返せば、薬を飲まない人に比べてそもそも予後悪化のリスクが高いともいえるからです。
ところで、一般的にポリファーマシーとは5剤以上の薬剤使用と定義されることが多いようです。併用薬剤が5剤を超えると、死亡や機能障害、転倒、虚弱(フレイル)のリスクが増加するという報告があります。[1] また、ポリファーマシーの定義に関するシステマティックレビュー[2] によれば、検索された110文献のうち51文献(46.4%)で、ポリファーマシーを5剤以上の薬剤使用と定義しており、薬剤数に基づくポリファーマシー定義の中で最多という結果でした。 本稿では、この5剤以上併用という状態に付与されている価値、意味合いについて、ポリファーマシーが生み出される背景も交えながら考察してみたいと思います。
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