読者の皆様は「末梢静脈カテーテル」というものをご存知でしょうか?
これは入院患者さんが点滴をする時などに使うもので、種類もたくさんあるのですが、今回は特に、いわゆるサーフロー®やスーパーキャス®に代表されるショートタイプの「末梢静脈カテーテル」、「留置針」について取り上げたいと思います。
医療従事者の方ならどういうものなのか想像がつくかと思うのですが、非医療従事者の方のためにも一応説明しておきます。
末梢静脈カテーテル、というものは平たく言うと「針」なのですが、金属の針の外側にポリウレタン製(これも様々)のカテーテルがついているものです(金属針にカテーテルを被せているイメージですが、先端は血管に刺入するために金属針がカテーテルよりも出ています)。
何故わざわざ針の外側に柔らかいカテーテルを被せているのかというと、例えば連日点滴をする時など、毎日毎日金属の針を刺すの患者さんにとっては苦痛が大きいです。しかし、だからと言って金属の針を刺しっぱなしにしておくと、針が金属製なので患者さんが動いたりするとすぐに血管を破ってしまったり、周辺組織を傷つけてしまうリスクが高いです。
そこで、金属の針の外側に被せておいたカテーテルだけを血管に刺しっぱなしにしておく、という方法がとられる訳です。
こうすることで毎日点滴する必要があったとしてもその度に針を刺す必要はなくなり、またカテーテルも金属の針と比べたら断然柔らかいので血管を破ったり周辺組織を傷つけたりすることも少なくなります。
※長々と説明しましたが下の写真を見た方がイメージが湧きやすいかもしれません。

さて、その末梢静脈カテーテルですが多くの病院で(静脈炎やカテーテルからの感染症等を予防するために)72〜96時間毎に交換する(つまり別の血管に刺し直す)ことが一般的になっているような印象を受けます。
これはアメリカのCDC(Centers for Disease Control and Prevention:疾病管理予防センター)がそのような推奨をしていることが大きな要因だと思われるのですが、前回の記事の2時間毎の体位変換同様、これも「何だか知らないけれどアメリカのどこか偉いところ(CDC)が”72〜96時間での入れ替え”を推奨してるらしいし、きっとそうした方がいいのだろう」と漠然と思ってしまっている現状があるのではないかと思います。
少なくとも私は漠然と思っていましたし、私が初めて勤めた病院でもそれに則っていた(つまり定期的に入れ替えていた)のでそれで良いのだと思っていたのですが、最近、「うちの病院は場合によっては72〜96時間以上使う」という話を聞いたり、72〜96時間という時間設定を支持しないという研究を読んだりしました。
なので一度しっかりとまとめて、改めて「末梢静脈カテーテルは72〜96時間毎に入れ替えた方が本当に良いのか?」について考えてみようと思います。
※本稿は拙ブログ「看護職のEBM」の記事「【Clinical Summaries】末梢静脈カテーテルは72〜96時間以内に入れ替えた方が本当に良いのか?」をアップデートしたものとなります。

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