地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2018年08月号 vol.4(8)

医療情報を読み解くための国語ゼミ 第2回:事実と意見、議論の前提と主題

2018年07月15日 18:17 by syuichiao

この連載は、ネット上の医療・健康に関する情報に対して、医学的な専門知識を駆使して吟味するというスタンスではなく、文章表現に対する論理的整合性という観点、つまりは国語力で情報内容の良し悪しを考えてみようという企画です。

 

ところで、国語とは何でしょうか。僕たちは小学校、中学校、そして高校でも国語という科目を学んできます。とはいえ、国語という教科でいったい何を学んだのか? とあらためて問われると、明確な回答を述べることが難しいような気もします。“国語とは言葉を学ぶ学問である” というのは一つの答えかもしれませんけど、言葉やその使い方というのは、教科書で勉強するというより、人と人との言語コミュニケーションの中で学ぶことの方が多いように思います。漢字を覚えたり、文章問題を解いた記憶があったとしても、そこから学んだのは一体なんだったのか、僕にはいまいちピンときません。文章問題についていえば、「出題者の意図を本文を参考にして読み解け」というものに終始していたような気さえします。

 

小説家の清水義範さんは、『はじめてわかる国語』という本の中で “国語というのは、どうも何を学ぶんだかよくわからない、輪郭のぼんやりした教科だなあ、というのが私の実感である” 【1】と述べています。自分自身の学生時代を振り返ってみても、どのように国語を勉強すれば良いのか、よく分からないまま過ごしてきました。だから、なんとなく国語に対する苦手意識みたいなものがあって、そこから逃げるように進路を理系に切り替えたのかもしれません。

 

ただ、文章を書くようになって思うのは、自分の頭の中の考えと、それを裏付ける客観的事実を論理的に接合し、それを言語に置き換えるプロセスが肝要だということです。国語教育で必要なのは、自分の考えと客観的な事実の区別、そして表現したいことを言語化するために必要な、言葉の豊かさを養う所にあるのではないかと感じています。

 

そんなわけで、今回は「自分の頭の中の考え」「客観的な事実」の区別という観点から、医療、健康情報を読み解いて見たいと思います。

 

【事実と意見】

 

本題に入る前に、「事実」と自分の考え、すなわち「意見」について簡単に整理しておきます。

 

事実とは、誰にでも経験できる客観的な事柄のことです。例えば、「このボールペンは100円である」 というのは事実を表した文章です。100円かどうかは、そのボールペンが販売されているお店に行き、値札を見ることによって誰でも確認することができるからです。お店の値札に書かれたボールペンの値段が100円であれば、『このボールペンは100円である』という文章は正しい事実を記述した文と言えます。しかし値札の値段が100円にもかかわらず、『このボールペンは150円である』 と言った場合には、誤った事実を記載した文という事になります。

 

事実を記述している文章は、常に正しい事実を記述しているわけではありません。ただ、事実はその記述において、正しいのか、正しくないのか、というように真偽を問うことが可能です。述べられている事実は、誰でも客観的に確認できることが可能なはずなので、その真偽を明確に定めることができると言うわけです。

 

一方、意見とは、自分の判断や自分の考えのことです。意見は事実と異なり、個人の主観的なものであり、調査や実験によって確認することが困難です。また意見は、その内容が、正しい意見なのか、そうでない意見なのか、決められないことも多々あります。例えば、『100円のボールペンは安い』というのは事実ではなく意見を記述した文ですが、“安い”ということの真偽について、一律に判断することは困難でしょう。100円が安いと思うか、高いと思うかは、人それぞれの価値観によるからです。

 

意見ついてはさらに推測評価仮説確信結論理論に分けることができます。「事実」と「意見」について整理すると(図)のようになります。

 

 

(図)事実と意見の違い

 

なお、意見を述べるときには、それがどのような意見であっても、根拠を示しながら述べるべきだと思います(ちなみにこれは僕の意見ですね)。根拠を示さずに意見だけを述べても説得力があるものにはならないでしょう。そして、一般的に、意見の根拠となるものは「正しい(あるいは妥当性の高い)事実」【2】でなくてはいけません。

 
【脚注・参考文献】

【1】清水 義範. はじめてわかる国語 (講談社文庫) 2006

【2】ちなみに、事実内容の妥当性の高さを評価するのが専門家の仕事の一つと言えます。

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