地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2019年07月号 vol.5(7)

せん妄は苦しい?

2019年06月16日 17:01 by kangosyoku_no_ebm
2019年06月16日 17:01 by kangosyoku_no_ebm
 大切な人が入院すると、その家族や友人、パートナーは不安になることが多いと思います。
 
 患者さん本人は勿論ですが、その周りの人にも病気そのもののことや手術のこと、仕事のことやお金のこと、今後のこと等様々なことが重くのしかかります。
 
 普段と全く違う病院という環境に居てたくさんの治療を受ける患者を見るだけでもすごく心配で疲れるのに、多くの人は自分の仕事等のやることがある中で、医師からの病状説明を聞いたり、保険会社や市役所とやりとりして必要な書類を手に入れたりと、しなくてはいけないことが沢山ありますよね。
 
 そんな大変なことがある中で患者本人の様子がいつもと違ったら余計に心配や疲労が大きくなりそうです。
 
 特に高齢者などでしばしば生じるのが「せん妄」です。
 
 せん妄については第一回の記事でも少し触れました。
 
 せん妄とはどのような状態か、診断基準を見てみましょう。
 
 
〈せん妄:診断基準:DSM-5〉[1]
 
1.注意の障害(すなわち、注意を向ける能力、集中、維持、転換する能力の低下)及び意識の障害(環境に対する見当識の低下) 
 
2.その障害は短期間(通常は数時間から数日)のうちに発生し、ベースラインの注意および意識水準からの変化を示し、1日の経過の間に重症度が変動する傾向がある 
 
3.さらに認知障害を伴う(例.記憶欠損、失見当識、言語、視空間認知または知覚) 
 
4.1および2の障害は、他の既存の確立されたまたは進行中の神経認知障害によってはうまく説明されず、昏睡のような覚醒水準の著しい低下という状況では起こらない 
 
5.病歴、身体診察または検査所見から、その障害が他の疾患、物質中毒または離脱(すなわち薬物乱用または医薬品によるもの)、または毒素への曝露、または複数の病因による直接的な生理学的な結果であるという証拠がある 
 
 
 医療従事者でなければ「なるほど分からん」というのが正直な感想ではないでしょうか。
 
 とりあえず簡単に言うと、せん妄というのは短期間のうちに生じる意識障害のことで、注意力が散漫になったり、支離滅裂な思考になったりします。
 
 終末期の患者さんにみられることも多いですが、「術後せん妄」という言葉があるくらい一般的な手術の後に生じることもよくあります。
 
 ばらつきも大きいですがせん妄は以下のような発生率だとされています[2]。
 
文献[2]より作成
 
 そもそも不安でいっぱいなのに患者がそんな状態だったら家族はどう感じるのでしょうか?
 
 また、患者自身はその時のことを覚えているのでしょうか?
 
 興味深い文献があったのでご紹介します。
 
 
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