はじめに
はやいものでもう夏ですね。毎年、この時期になると「夏がやってきた!」みたいなことを書いているような気がしますが、私は引越しをしなくてはならなくなり、引越しの準備に追われて夏を楽しもうなどという余裕はありません。片付けても片付けても部屋の内観に変化がみられず(前後比較にて有意差なし)、途方にくれています。物を捨てられない私は無事に引越しできるのでしょうか…。
私情はさておき、ねこ薬局に舞台を移して、ねこと一緒に論文を読んで参りましょう!
ねこでも読める医学論文 第11話
「緑内障治療薬のラタノプロストは点眼回数を増やすと効果が落ちる?」

みに丸「うーむ…。」
はかせ「どうしたんだい?昼休みだというのに、添付文書(*)を見ながら難しい顔をして…。」
*薬の説明書のこと
みに丸「いや、緑内障治療薬の『ラタノプロスト点眼液(キサラタン)』なんですけどね。用法は『1日1回点眼』なんですけど、注意事項として『頻回投与により眼圧降下作用が減弱する可能性があるので、1日1回を超えて投与しないこと』っていう注意書きがあるんですよ。」
はかせ「ああ、そういえばそんな記載があるね。」
みに丸「なんですか、その冷めたリアクションは!?不思議だと思わないんですか!?点眼回数を増やしたら効果が落ちるかもしれないだなんて超不思議じゃないですか!」
はかせ「きみ、いつになくアツいね。お湯を入れたまま5分以上放置しているきみのカップうどんもアツいうちに食べたほうがいいぞ」
みに丸「おっと、忘れていた!ずるるっ、ずるるるっ。ああ、うまい!うどんはうまいなぁ。」
はかせ「そうか…。そりゃよかった。」
みに丸「あー、うまかった。ごちそうさまでした。で…、なんの話をしてたんでしたっけ?」
はかせ「うどんを食べただけで、せっかくの臨床疑問に興味を失うところが感慨深いね。熱心に勉強しているなぁと感心したのに、気持ちの行き場を失ったよ。」
みに丸「ボスのド忘れがうつっただけじゃないですか。興味を失ってはいませんよ。ボスに対する尊敬の念は行き場を失う一方ですが…。」
はかせ「なんだと!」
みに丸「まあまあ。くだらないやりとりはここまでにして、ラタノプロストの話をしましょう。」
はかせ「おお、そうだった。」
みに丸「添付文書に書いてあるこの注意書きですが、根拠ってあるんでしょうか?」
はかせ「添付文書に書いてないの?どれどれ…。あ、ほんとだ。書いてない。インタビューフォーム(*)は?」
(*)添付文書より詳しい薬の説明書
みに丸「あっ、そっちは見てなかった。」
はかせ「どれどれ、スマホで見てみるか。えーと、『海外の臨床試験において、1 日2 回点眼した場合、点眼日数の増加に伴って眼圧下降作用の減弱がみられたとの報告がある』って書いてあるね。とくに引用元は書いてないみたいだなぁ。」
みに丸「その根拠となる臨床試験の論文を見てみたいですね。引用文献が書いてないのかぁ」
はかせ「うーん…、見当たらない…。」
みに丸「そっかぁ。どれくらい効果が落ちてしまうのか知りたかったんだけどなぁ。たとえば、患者さんが回数を間違えて点眼しちゃったら、どれくらいまずいことになるんでしょうね」
はかせ「たしかにどのくらい効果が落ちるのか気になるよね。これについては、以前、気になって調べたことがあるんだ。ラタノプロストの論文があったはず。」
みに丸「おお、奇遇ですね。では、その論文を紹介してくださいよ。」
はかせ「オッケー。ではまず図解を。」

文献[1]を基に作成
ここからは論文を手元に置いて、ねこ薬剤師たちと一緒にお楽しみ頂ければと思います。
対象論文はこちらです。
[1]Lindén C, Alm A. The effect on intraocular pressure of latanoprost once or four times daily. Br J Ophthalmol. 2001;85(10):1163-6.PMID11567957
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