地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2019年08月号 vol.5(8)

身体拘束のエビデンス

2019年07月22日 23:43 by kangosyoku_no_ebm
 ”身体拘束”
 
 これは文字通り身体を動かないように拘束することを意味します。
 
 色々な論文でも「身体の動きを制限するもの」と定義されていることが多いように思います。
 
 そして、病院などではしばしばこの身体拘束が用いられますよね。
 
 韓国のICUにおける身体拘束の使用パターンを調査した研究によると、身体拘束を適用するという決定の90%以上は看護師によってなされており、患者が医療機器を取り外さないようにすること(48.6%)が主な理由であると報告されました[1]。
 
 一方で、この研究では、認知状態の改善(29.3%)が拘束の解除の主な理由であるとも報告しています[1]。
 
 逆に言えば「認知状態が不安定な患者で医療器具がついている患者には身体拘束が必要」と考える看護師が多いとも言えそうです。
 
 医療器具というのは、例えば、人工呼吸器や中心静脈カテーテル、ドレーン等が主なものとして挙げられると思います。
 
 人工呼吸器を装着している患者であればそれを外してしまうと場合によっては死に直結しますし、中心静脈カテーテルからはその患者に必要な点滴や薬剤を投与しているのでこれも患者の全身状態に大きく影響するので、医療従事者としては絶対に回避したいですよね。
 
 こういったことから、病院などではしばしば身体拘束が用いられるのですが、当然、倫理的な問題が出てきます。
 
 身体を自由に動かせない患者自身はとても辛いだろう、その患者の家族の心も痛むんじゃないか、身体を拘束することによる傷害だって起こり得るんじゃないか。
 
 ただ一方で、(身体拘束は転倒予防目的で用いられることもあるのですが)倫理的な面も考慮して身体拘束を使用しなかったケースで転倒してしまった時、訴訟になって施設側が数千万円の賠償金を請求されている事例も散見されます。
 
 このように身体拘束には安全と尊厳のトレードオフ的な側面もあり、非常に悩ましい問題になっています。
 
 本稿では身体拘束にまつわるエビデンス、特に患者・家族・医療従事者が身体拘束をどのように捉えているのかということについてのエビデンスをまとめます。
 
 【参考文献】
 
[1]Choi E, Song M.Physical restraint use in a Korean ICU. J Clin Nurs. 2003 Sep;12(5):651-9.[PMID:12919211]
 
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