地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2019年07月号 vol.5(7)

映画「道草」・相模原事件・分断・監督とspitzibaraのトーク

2019年06月30日 00:06 by spitzibara

 映画「道草」(2018年/95分/監督 宍戸大祐)は、地域でヘルパー(介護者/介助者)付きで自立生活を送る、いわゆる強度行動障害のある重度知的障害者の生活を描いた映画です。登場するのは以下の4人の青年と介護者、家族たち。それから、ヒロムさんが毎日散歩に出かける石神井公園の生き物たち(頻繁に登場するので、エンドロールで出演者として挙げられています)。

リョースケさん:18歳から、小学校の頃から馴染みの介護者たちとアパートで独り暮らしをしている。平日の日中は作業所で好きな絵を描いて過ごす。

ヒロムさん:幼少期から入所施設で育ち、思春期から自傷・他害行為が止まらなくなった。1年の入院後、自立生活を始めて3年。介護者と石神井公園を散歩するのが日課。

ユウイチロウさん:施設での被虐待経験があり、不穏時には大声での暴言、ものを叩き壊すなどの行為が見られる。アパートも借家も契約更新が難しく、自立してからも思うような暮らしを掴めずにいる。

カズヤさん:平成28年7月に相模原市で起きた津久井やまゆり園事件の被害者の一人。大きな傷を負い心肺停止状態だったが、一命をとりとめた。事件後の議論では、やまゆり園家族会の前会長である父親は、障害者運動に対して施設の必要性を訴えたが、それが事業所との出会いを生み、両親は現在息子の自立生活を模索し始めている。

 その他の詳細については、 「道草」公式サイトのこちらに⇒ https://michikusa-movie.com/about/

 私の暮らす広島では、尾道市のシネマ尾道と広島市内の横川シネマで6月1日から14日まで上映され、尾道での初回上映後に、宍戸監督とspitzibaraこと児玉とで約30分間のトークを行いました。

 トーク冒頭でもお話ししているように監督とは5年来のお付き合いですが、相模原市の津久井やまゆり園で19人の知的障害者が殺害された3年前の事件の後に、障害者運動から施設否定論が噴出し、「施設か地域生活か」の二者択一で敵・味方を分かつような空気によって、関係者の間に大きな分断が生じました。なので、何か月か前に監督から尾道でトークをやりたいと提案があった時には、まるで「敵陣に単身で乗り込んでこい」と言われたような気がしたものでした。もちろん即答はできませんでした。事件後に監督と会って語り合ったことが何度かあり、そのたびに立場や考えが違う者の言葉から学ぼうとする監督の姿勢を感じていなかったら、恐らくはお断りしていたような気がします。

 結果的に、耳に痛い言葉からこそ学ぼうとする宍戸監督の姿勢のおかげで、あの事件でできた分断の両側に立場が別れる者の間で、それなりの「対話」にすることができたのではないかという気がしています。

 それは、私のような言いたい放題の素人を記者として参加させてくださっている「地域医療ジャーナル」の心意気にも常々感じていることなので、読者の皆さんに今月号の記事としてトークの内容をご紹介したいと思いました。

 ちなみに、私が敬愛するあるジャーナリストは、この映画を「地域移行促進のための啓発映画ととらえずに、強度行動障害のある知的障害者の幸せについて考えるヒントにしていければいいと思った」とおっしゃっています。

 以下、監督とのトークの内容です。

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