熱中症は7月中旬から8月中旬にかけて患者が急増しますが、性別では男性が多く、高齢になるに従い重症例が増加します【1】。また近年、熱中症による死亡は増加傾向にあり、特に65歳以上の高齢者で多く、発生場所の多くは住居でした【2】。熱中症は、屋外でのスポーツ活動や労働作業時だけでなく、日常の生活活動時にも多く発生しており、屋内活動においても注意が必要です。本項では、夏季における健康問題として重要な熱中症について、その基本的な疾患概念と予防や治療についてまとめます。
【熱中症の発生に関係する気象条件とその指標】
熱中症の発症は3つの環境要因、すなわち高温環境、高湿度環境、および無風環境と密接に関係しています。米国では、温度と湿度を用いて算出された、ヒートインデックス (heat index)が、熱中症の警戒指標(暑さ指数)として用いられています。ヒートインデックスが41を超えると危険レベルとなり、熱中症の発症リスクが増加します【3】。
夏期の湿度が高い日本では、気温だけでなく湿度も熱中症の増加に大きく寄与すること、日射(地表に到達した太陽の放射エネルギー)の影響も考慮する必要があることから、暑さ指標には湿球黒球温度(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)が採用されています。その単位は摂氏度(℃)で示されますが、【表1】に示した通り、黒球温度、湿球温度、乾球温度をもとに算出され、気温(乾球温度)とは異なります【4】。
【表1】温度を示す指標(参考文献4に基づき筆者作成)
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