こんにちは。Independent Librarian(インディペンデント ライブラリアン) の chebsat33 です。
この連載では、主に “情報環境のあまり整っていない医療職がEBMを実践する際のヒントとなるようなリソースと活用のコツ” を紹介していく予定です。名付けて『ライブラリアンによるないないづくしのEBM』、略して『LiNE』としてみました。細く縒られた切れやすい糸のように拙い私の文章が、読んでくださる方たちのもとでそれぞれに綴られていき、いつか一枚の布のように何かの時にお役に立つものになったとしたらうれしいです。どうぞ、お付き合いくださいね。
さて。
第6回は、今号の特集テーマ「これからの医療・健康情報におけるキーワード」と、いつものLiNEのかけあわせとなります。
あらかじめ考えていた連載の内容と今回の特集の内容が、重なりました。
ともかく Good Timin' な波に乗って、はじめます。
俯瞰:MeSHから考える「医学 "情報" 」の変化
秋ですね。朝晩がずいぶん涼しくなり、虫の声も聞こえるようになりました。
みなさんそれぞれにそれぞれの季節を感じるポイントがあると思うのですが、医学司書には『MeSH(Medical Subject Headings,第5回 : だけじゃないシソーラス [MeSH編]も どうぞ)』で秋を感じる人がいます。私も、その一人です。
なぜなら毎年9月の半ばになると、NLM(National Library of Medicine)がPubMed/MEDILINEの年末処理(Year-End Processing, YEP)についてのお知らせを発表するからなのです。
MEDLINE/PubMed Year-End Processing Activities for 2020 MeSH.
NLM Tech Bull. 2019 Sep-Oct;(430):e2.
2019年は12月4日から索引作業(シソーラス用語を文献データに付与する作業)を一時的に休止するとありました。索引の典拠であるMeSHを2020年版へ変更するためです。12月半ばには、新しいMeSHで索引された文献データがお目見えします。
YEPの間も文献データ自体は追加されるため、期間中の検索には注意を払うことが必要になります。通常はシソーラス用語で検索できるはずの文献がヒットしない場合がある、YEPの期間中に行った検索を別の時期に行うと同じように検索しても結果が異なる可能性がある(再現率が低くなる)ということです。
そう、MeSHは毎年改訂するんです。
しかも、結構な変更があります。
2019年版は、以下のような変更に関するお知らせが届きました。
What's New for 2019 MeSH.
NLM Tech Bull. 2018 Nov-Dec;(425):e6.
そして。
実は、すでにMeSH2020年版は公開されています。はい、こちらです。
MeSH Browserには通常、画面上部にあるメニューの中央に、前版のリンクが置いてあります。それが更新時期になると、次の版(今回の場合は2020年版)へのリンクに変わります。
YEPが完了すると、現行の版(今回の場合は2019年版)に割り当てられたMeSH Browserの公式URLが新しい版に適用されます。
新版での変更点(標目やスコープノートの追加や削除、統合など)の詳細は、毎年12月に発表されます。ですから、この記事を作成している2019年9月に2020年版の全体像を把握することは、できません。ただし、2020年版のツリー表示を展開していると、新しい標目に気づいたりはします。
たとえば、こちら。
Detailsの画面にある「Date Established」の項目を見ると、「2020/01/01」とあります。この日付で、MeSHの何年版で登録されたのかを確認することができます。
いや、それにしても。
なんでこのことばに気づいたのか…
見えない誰かに自分の足りない部分を指摘されているような…
背後にひんやりした何かを感じつつ、本題に戻ります。
これまでのMeSHの変更点すべてを "日本語で" 詳しく知りたいという方には、東京慈恵会医科大学学術情報センターの阿部信一(Abe, Shinichi)さんによる報告をぜひ、ご覧ください。彼は日本の司書として、MeSHの専門家として、10年以上に渡ってMeSH改訂についての報告を続けています。
阿部 信一.
Medical Subject Headings (MeSH) 2019年版の変更点.
オンライン検索. 2018 39(3) : 67-93.
NAID: 40021779974
※過去の解説一覧(2003年版-2019年版)はこちら
阿部さんは私が敬愛する司書の一人で、医学司書のコミュニティでは協働する間柄(=お世話になりっぱなしの方)です。「彼にすぐ相談できるような環境で研究ができたらきっとどえらいこと快適なんだろうな」「いつか自分もそんな司書になれたらいいな」としばしば思います。
ということで、彼ほどの能力と根気はない私ですが、私もMeSHの変更点から医療情報との向き合い方について何か見えてこないか、鳥の目で考えてみることにしました。
〈今回紹介したリソースは2019年9月12日にアクセス確認を行いました〉
読者コメント