今回の企画特集では、連動するトークイベント企画「表現としての医療・健康情報—情報をデザインし発信するということ」を開催いたしました。
このイベント登壇者の一人 デザインディレクターの川名紀義さん から、特別に特集記事をご寄稿いただきました。
医療情報はどう表現したらよいのか、デザインの観点から考えてみたいと思います。(編集長)
はじめまして。デザインディレクターの川名です。私は10年以上、医療分野に携わってデザインをしています。
医薬品、医学書、医療施設や教育機関などの情報が的確・正確に伝わるお手伝いを、主にウェブやグラフィックデザインを通して行っています。
企画書をパワポで作る、パンフレットを作る、ウェブサイトを更新する。
情報を一枚の紙にまとめて、患者さんに理解してもらう。
デザイナーでなくとも医療の現場において、日常的にデザインをしている方はとても多いと思います。
医療や健康に関わる情報を「わかりやすく」「すばやく」「効率的に」伝えるというのは、実務においても大切なことだと考えていらっしゃると思います。
私はライターや編集者、時には医療者が直接設えた情報について最後のバトンを受け取り構成し、それこそ無数にと言ってよいほど、世に送り出してきました。
何が人に伝わるか、伝わらないかという医療情報の視覚表現における最前線の現場で、日々表現を工夫しています。
情報を世の中に送り出す工程において、デザイナーは発信者というほど発信の主体ではないですが、世間一般においては純然たる受信者とは言えない、メディアのメディウムのような立ち位置です。
私は薬学や医学の専門家ではありませんが、専門家の情報を咀嚼し、多くの人が理解できる形にすることを仕事としています。
デザインもまた情報の精度に決定的な影響を与えうる(与えざるを得ない)重要な交絡因子である以上、一次情報の精度とわかりやすさは非常に重要です。
プロのデザイナーはどのように考えて、何を基準にデザインをしているのか。
デザインと情報の関係性を知ることは、医療情報を発信する側にとっても受け手にとっても有意義なことだと思います。
もちろん一つ一つの事業、一人ひとりの立場によって状況は全く異なります。
そこでアイディアを出したり、情報を整理するための地図ではなくコンパス、つまり目指すべき方向を「デザイン・コンパス」と名付けて共有します。
「これが正解」というのではなく、「このような方向で考えていくと、より精度の高い情報発信に近づく」という方向性を指し示すことができればと考えています。
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