野菜や果物、あるいは新鮮な魚など、加工度が低く、添加物が少ない食品は健康に良いイメージがあります。他方で、スナック菓子、インスタントラーメン、ハンバーガー、サラミやソーセージなど、高度に加工された食品を毎日食べ続けることは、なんとなく体に悪いような印象があるかと思います。
高度に加工された超加工食品の摂取と健康への影響を検討したスペインの研究【1】によれば、超加工食品の摂取量が最も多い集団(1日4食超)では、最も少ない集団(1日2食未満)に比べて、死亡のリスクが1.62倍、統計学的にも有意に高いことが示されました。また、この研究では超加工食品が1食分増加するごとに、死亡のリスクが18%有意に増加することも示されました。
確かに、バランスの良い食習慣が健康的であることは、なんとなく理解できることでしょう。実際、食習慣に配慮している人では、そうでない人と比べて、心臓病や脳卒中による死亡リスクが低いという研究【2】が報告されています。
この研究は、日本人79594人を約15年間にわたり追跡調査したもので、食習慣については、厚生労働省と農林水産省が2005年6月に策定した『食事バランスガイド』の遵守状況で評価されています。その結果、遵守状況が最も悪い人と比べて、最も良い人で総死亡のリスクが15%、心血管死亡のリスクが16%、脳血管死亡のリスクが22%、統計学的にも有意に低下しました。
ただ、このような研究データを見て思うのは、食事バランスガイドを遵守しているような健康的な食習慣に配慮している人では、そうでない人に比べて、潜在的に疾病の罹患リスクが低いのではないか?という疑問です。健康的な食習慣に配慮するような人というのは、そもそも健康に関心が高い人でしょう。つまり、検診や予防接種などの予防的医療を積極的に受けていたり、薬物治療を既に受けているのであれば、欠かさず医療機関に通い、処方された薬も指示通りしっかり服用している人かもしれません。
食事バランスガイドの遵守状況を検討した研究では、年齢、性別、体格指数(BMI)、喫煙状況、身体活動量、高血圧・糖尿病・脂質異常症の病歴、コーヒーや緑茶の摂取、職種といった背景因子について、統計的に補正をして解析しています。とはいえ、健康に対する関心の温度差というのは、予後に影響を与えうる強い因子であると同時に、客観的に数値化することが困難であるがゆえに、統計的な補正を加えることは難しいように思います。
食習慣に配慮した生活で本当に健康になれるのでしょうか? 実はそうでもない可能性を示した研究も少なくありません。今回は食事と健康に関する論文をいくつか取り上げながら、健康と生活について考察をめぐらしてみたいと思います。
【参考文献】
【1】BMJ. 2019 May 29;365:l1949. PMID: 31142450
【2】BMJ.2016;352:i1209. PMID:27005903
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