地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2019年11月号 vol.5(11)

ねこでも読める医学論文 第15話「インフルエンザの新薬は従来の薬より有効?」

2019年10月27日 11:49 by ph_minimal

はじめに

「えっ!!?」 

前月号に続き、冒頭から驚きの声を上げてしまいましたが、今回はうっかりテーマを間違えて書いてしまったわけではありません。このイントロダクションを書いている10月1日時点でインフルエンザによる学級閉鎖のニュースが散見されるのですッ!

はやい…。はやすぎる…。「きみの出番はまだだよ」と舞台から引きずりおろして楽屋に戻してあげたいところですが、出しゃばりインフルエンザウイルスは舞台で暴れだしています。

インフルエンザ流行目前ということで(この記事が公開される頃には大流行かも…?)、去年話題になった新薬「バロキサビル」について取り上げたいと思います。

 

ねこでも読める医学論文 第15話「インフルエンザの新薬は従来の薬より有効?」

 

 

みに丸「ゲッ!」

はかせ「何を驚いているんだい?」

みに丸「インフルエンザで学級閉鎖ですって!」

はかせ「まだ10月になったばかりだというのに、はやいなぁ。ウチのまわりはまだ流行してないようだけど」

みに丸「嫌だなぁ…。もうそんな季節かぁ。そういえば、去年話題になったインフルエンザの新薬ってどうなんですかね?」

はかせ「バロキサビル(ゾフルーザ)かい?ハイリスク患者を対象にした論文はまだ発表されていないようなんだが、ハイリスク患者を除外した第3相試験の結果は発表されているよ。読んでみるかい?」

みに丸「読みましょう!」

 

 

文献1)を基に作成

 

ここからは論文を手元に置いて、ねこ薬剤師たちと一緒にお楽しみ頂ければと思います。

対象論文はこちらです。

https://www.nejm.org/doi/10.1056/NEJMoa1716197

左側のバーにあるPDFをクリックしてください(PCの場合)。補足資料(Supplementary Appendix)は最下部にある『Supplementary Material』という項目でPDFファイルをダウンロードできます)

 

1)Hayden FG, Sugaya N, Hirotsu N, et al. Baloxavir Marboxil for Uncomplicated Influenza in Adults and Adolescents. N Engl J Med. 2018;379(10):913-923.PMID: 30184455

 

 

はかせ「まずはこれまでの抗インフルエンザ薬をまとめてみよう。添付文書を見て、特徴をピックアップするんだ」

みに丸「わかりました!」

はかせ「ふむ。従来のノイラミニダーゼ阻害薬は増殖したインフルエンザウイルスが細胞の外へ拡散するのを防ぐことで、さらなる増殖を抑える働きがあるが、バロキサビルはウイルスmRNAの合成を阻害することでウイルスの増殖を抑えるとされている」

みに丸「どの薬剤もウイルスが増えるのを抑える薬というわけですね」

はかせ「そうなんだ。直接ウイルスをやっつけるわけではない。だから可能な限り速やかに投与して、ウイルスの増殖を防ごうってわけ。症状発現から48時間経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータはないと添付文書に記載されている。これはすべての抗インフルエンザ薬に共通だ」

みに丸「なるほど。新薬のバロキサビルは錠剤を1回飲むだけで治療終了ってところが簡単でいいですね」

はかせ「たしかに楽だ。咳がひどけりゃ吸入しにくいし、単回服用の飲み薬は患者さんにとっては負担が小さいかもね」

みに丸「患者さんにとっては飲みやすさとかも大事ですもんねぇ。ただ、有効性がどうなのかってところが一番大事ですけど」

はかせ「そうだね。ノイラミニダーゼ阻害薬はインフルエンザの症状がだいたい1日程度短縮されるという話だけど、作用機序の異なるバロキサビルはどうだろうか。あと、安全性についても気になる。効果が持続するから1回服用でいいってことは副作用が出た場合は、不都合な症状が遷延しやすいかもしれないからね。早速論文を見てみよう」

 

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