インターネットで「健康長寿」と検索すると「健康長寿は目指すべきもの」という前提で書かれた記事ばかりが表示されます。実際、健康で長生きをすることは良いことであるという直観がありますよね。健康長寿を明確には意識せずとも、僕たちは健康を前提に生活を営んでいるように思います。
健康長寿を実現するために医療や福祉、生活習慣の大切さが強調されることも多いかもしれません。しかし、健康は医学的ケアや個人の生活習慣だけではなく、社会的環境によっても大きな影響を受ける可能性については「社会的環境が人の健康状態を決定する―社会疫学のススメ」でもご紹介しました。
特に高齢者においては健康を決定する因子として地域や社会への参加は軽視できません。実際、日本の地域在住高齢者15313人を対象とした研究では、社会的関与の多い人で死亡や長期介護の必要性が少ないという結果でした【1】。
この研究では社会への参加について「(町内会のような)地域コミュニティへの参加」、「趣味グループへの参加」、「スポーツへの参加」、「政治団体への参加」、「業界団体への参加」、「宗教団体への参加」、「ボランティア団体への参加」、「市民団体への参加」の8つのカテゴリから少なくとも1つの組織に参加しているものと定義されました。研究対象者の15313人のうち73.6%にあたる9863人(平均72.5歳)が社会への参加をしており、最終的に9741人について長期介護の必要性及び、死亡が検討されました。
9.4年間にわたる観察の結果、社会への参加をしていた人はそうでない人に比べて、長期介護の必要性が18%(オッズ比0.82[95%信頼区間0.69~0.97])、死亡が22%(オッズ比0.78[95%信頼区間0.70~0.88])低いという結果でした【図1】。
【図1】高齢者の社会参加と長期的な介護の必要性、死亡の関連(参考文献1より作成)
継続的に社会参加が可能な人はそもそも健康であるという逆の因果の可能性や、スポーツへの参加とボランティアの参加を同質な社会参加とみなしてよいかなど、研究結果の妥当性については議論の余地があるでしょう。とはいえ、人生に生きがいを持つことや目的意識や目標を持つことは生活の質を高めるうえで重要な要素のように思えます。今回は生活を豊かにするための生き方について少し考えてみたいと思います。
【1】 BMJ Open. 2019 Nov 11;9(11):e030500. PMID: 31719076
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