EBM(Evidence Based Medicine)、根拠に基づいた医療という用語は、Gordon Guyatt氏が1991年[1]に用いたのが始まりだそうです。
現在では医療実践にエビデンスを用いることは医師や薬剤師を中心にかなり普及してきているように感じます。
そして当然、看護業界にも同様の流れがあります。
試しにPubMedで"evidence based nursing"で検索すると1996年に初めて1件ヒットし、その後徐々に増加していって2012年にピークを迎えています(その後は減少傾向)。
地域医療ジャーナルで連載されている先生方はまさに代表的ですが、様々な人が根拠に基づいた実践の実現のために尽力されています。
しかし、EBMの実践には様々な能力が必要とされるのも事実です。
論文にアクセスできる環境と検索する技術、英文を読解する力、 疫学や統計学等の知識、 論文を批判的吟味する力と臨床で実践する力など、これらを習得するのはかなり長い道のりです。
そしてそれらの習熟をしてアウトカム改善まで実現するのは容易いことではありません。
実際問題として、大学院で時間をかけて学ぶようなことをすぐに出来るようにはなりませんよね。
それでも論文を読んで理解して実践に活用する能力は臨床家としては求められる能力ではあると思います。
しかし現状、臨床の看護師がエビデンスを活用できているのかというと、十分にはできていないと感じることが多いのも事実です。
では、それらを検証した研究をいくつか読んでみましょう。
看護師のエビデンスに基づいてケアを提供する能力を調査することを目的に行われた研究があります[2]。
この研究では、アイスランド看護協会に登録されている看護師2498人を対象とし、そのうち1040人をランダム抽出して調査しました(回答率54.1%)。
大まかな参加者背景は以下のとおりです。
・38.1%(n = 205)が何らかの専門の認定を受けている・11%(n = 58)はすでに看護学の修士号または博士号を取得・71.5%(n = 382)は臨床で働いている
具体的には、看護師にとってのEBP(Evidence Based Practice:根拠に基づいた実践)の価値とEBPを実践する能力を捉えるために設計された EBP Beliefs Scale[3]を用いて実態を評価しています。
このスケールには16項目の声明があり、それらに対して参加者は5点のリッカート尺度で同意しないか(1 =強く同意しない)または同意する(5 =強く同意する)かで回答しました。
結果は以下のようになっています。
論文[2]より筆者作成
根拠に基づいた実践を重要であるとは認識しているものの、具体的な方法論についてはよく分かっていないと感じているのが現状であると示されています。
また、この研究では情報源別の使用頻度も調査しています。
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