読者のみなさま、今月号も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
お忙しい中、ご寄稿いただきました記者のみなさまには、感謝申し上げます。
新型コロナウイルスの国内流行が拡大しつつあり、日常生活に影響が出始めています。デマが拡散するなど情報が錯綜し、混乱もみられているようです。
医療者としては情勢を見極めながら、冷静に感染拡大に努めていきたいと思います。
わかりやすさと妥当性の狭間で
現在、本誌連載記事から生まれた初の単行本が発売中です。
著者は本誌連載記者の青島周一さん。詳細はこちらをご覧ください。
医療情報を見る、医療情報から見る エビデンスと向き合うための10のスキル
株式会社 金芳堂
著者献本もいただき、出版記念読者プレゼント企画も行いました。たくさんのご応募、ありがとうございました。
通読させていただきましたが、改めて大変わかりやすく書かれており、専門的な領域にまでも踏み込みながらも、理解が深められる著作となっています。
専門的知見を正確に伝えようとするとわかりにくい、わかりやすく伝えようとすると正確ではない。このジレンマをどうするのか、という課題に対して、いくつもの示唆を与えてくれるでしょう。
人は欲しい情報が欲しいだけ
最近、新型コロナウイルスに関するメディアの報道やネットの情報を概観していて、よく感じることがあります。それは、「人は欲しい情報が欲しいだけ」なのかもしれない、ということです。
「正しい情報」や「わかりやすい情報」が求められているのはもちろんですが、「欲しい情報」のほうが優先されるのではないでしょうか。
早く安心したい、という意図からなのか、早さ(速報性)も要求される傾向にあるように思えます。
つまり、欲しいときに欲しい情報が欲しいということ。情報検索エンジンを使い慣れたSNS世代の特徴を反映しているのかもしれません。
正しい情報をわかりやすく伝えようと専門家が努力している間に、人々は欲しい情報に飛びついてしまう。新型コロナウイルスにおける情報収集においては、そんな姿が浮き彫りになっているのかもしれません。(流行が収束してから検証が必要でしょう。)
欲しい情報が「偶然」、専門性の高い情報だとしたら、専門家による専門性の高い情報が求められるでしょう。しかし、多くの場合はそうではないようです。
少なくとも、専門性の高い情報や専門家ばかりが求められていると勘違いしないよう、自重自戒したいと思います。
沈思黙考するメディアをめざして
「遅いインターネット」(宇野常寛 著、幻冬舎)では、速すぎる情報に依存しない、深い思索にもとに書かれた批評がこれからは必要とされる、と主張されています。
まさしくこれは、本誌の理想として追求してきたことであり、まだ実現できていない目標点でもあります。
欲しい情報を速やかに出すことが、専門家の役割ではなかったはずです。
もう一度、本誌を創刊した当時の原点に立ち返り、これからも時間をかけて考えていきたいと思います。
地域医療編集室、メンバー募集中
「地域医療編集室」では、「エビデンスのやさしさと、癒し手のあたたかさ」をもって医療を変えていこう、というコンセプトに賛同するメンバーを募集しています。
まだまだ小さな活動ですが、メンバーで意見交換しながら、ひとつひとつ構想を実現させていきたいと考えております。
参加には月額料金を設定させていただきますが、参加資格要件はありません。医療に従事していない方も広く募集しております。
特に、医療における「エビデンス・情報発信・芸術」の活用、のいずれかの分野に関心があり、楽しく積極的に参加できる方が適しています。
ぜひ、ご検討ください! 詳細はこちら。
それでは、今月はこのあたりで。また来月、お会いしましょう。
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