はじめに
日本で広く使用されている便秘薬『酸化マグネシウム』について取り上げます。酸化マグネシウムは古くから使用されているものの、今までプラセボ対照のランダム化比較試験は実施されていなかったようです。昭和の時代から使われてきたものの、エビデンスのないまま平成という時代を乗り越えて令和に突入し、新しい時代の幕開けとともにようやくランダム化比較試験のエビデンスが出ました。早速、読んでみましょう!
ねこでも読める医学論文 第20話
「便秘に対する酸化マグネシウムの効果」
みに丸「便秘気味の若い女性から電話がありまして、市販の便秘薬の効き目はどれくらいなのか?って聞かれたんですけど」
はかせ「ほうほう。『どれくらいなのか』っていうのは重要だよね。ある程度の目安を患者さんにお伝えできた方が望ましい。で、何の薬だい?」
みに丸「刺激性の下剤はクセになるので嫌だってことで、酸化マグネシウムが欲しいそうです」
はかせ「ほうほう。勉強熱心な方だなぁ。酸化マグネシウムは腸管内に水分を保持して便を柔らかくする薬で耐性を生じないと言われている。便秘の患者さんにしばしば処方される薬だね」
みに丸「ただ、どのくらい効くのかっていうと酸化マグネシウムはエビデンスがないので、ぼくはもう困ってしまって…。個人差はあるでしょうけど目安はお伝えしたいんですよね」
はかせ「エビデンスあるよ」
みに丸「日本ではよく使われる薬ですけど、海外ではあまり使われていない薬だからデータが…ブツブツ」
はかせ「おい、聞いてるかい?エビデンスあるってば」
みに丸「えっ!?」
はかせ「エビデンスあるんだよ(3回目)」
みに丸「またまた…。たしかプラセボと比較したランダム化比較試験は実施されてないんじゃなかったでしたっけ?」
はかせ「最近、論文が発表されたんだよ。2019年の暮れだったかな」
みに丸「なにィィ!?そ、その論文を教えてくださいッ」
はかせ「あいよー」
対象論文[1]はこちらからダウンロードできます。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6786451/pdf/jnm-25-563.pdf
ぜひとも論文と照らし合わせながら、ねこ薬剤師たちの論文抄読会にご参加ください。
[1]Mori S, Tomita T, Fujimura K, et al. A Randomized Double-blind Placebo-controlled Trial on the Effect of Magnesium Oxide in Patients With Chronic Constipation. J Neurogastroenterol Motil. 2019;25(4):563–575.
~研究の背景~
はかせ「まずは研究の背景について、564ページのイントロダクションからかいつまんで要約しよう。『浸透圧性下剤の酸化マグネシウムは1980年代から使われている薬剤で、低コストで用量調整しやすく、現在、日本で約1000万人に使用されている。日本のガイドラインで浸透圧性下剤は慢性便秘に強く推奨されているが、酸化マグネシウムの有効性を検証したランダム化比較試験はない。そこで、本研究で酸化マグネシウムの効果を科学的に検証した』とのことだ」
みに丸「やっぱり、これまではランダム化比較試験は実施されてなかったんですね」
はかせ「そのようだね。何十年も使用されてきた身近な薬のエビデンスが出たってことで、ありがたく読ませていただこうじゃないか!」
読者コメント