こんにちは。Independent Librarian(インディペンデント ライブラリアン) の chebsat33 です。
この連載では、主に “情報環境のあまり整っていない医療職がEBMを実践する際のヒントとなるようなリソースと活用のコツ” を紹介します。名付けて『ライブラリアンによるないないづくしのEBM』、略して『LiNE』としてみました。細く縒られた切れやすい糸のように拙い私の文章が、読んでくださる方たちのもとでそれぞれに綴られていき、いつか一枚の布のように何かの時にお役に立つものになったとしたらうれしいです。どうぞ、お付き合いくださいね。
さて。
第8回から、『Resources for Evidence-Based Practice: The 6S Pyramid(根拠に基づく臨床のためのリソース:6Sピラミッド)』の各階層に該当するリソースの例を紹介しています。ピラミッドの日本語訳や各階層の関係性については、「第7回: まとまりはどこから」を参照してください。
第13回では、個々の研究についてです。6Sピラミッドでは「Single Studies」が該当します。
Single Studies:個々の研究
6Sピラミッドの「Single Studies」に該当するリソースは、臨床で生まれた疑問に対し解決や考え方の道筋を与えてくれるような個別の研究が該当します。
「医学文献の検索といえば "PubMed" 」
医学や医療などのヘルスサイエンス領域では、個別研究を探す際の第1選択肢のリソースとして「PubMed」が挙がるのではないでしょうか。3000万件を超える文献情報を無料(正確にはアメリカ国民の納税のおかげ)で検索できる、世界最大のヘルスサイエンス系文献データベースです。2019年末から新しいインターフェース(New PubMed)への移行期に入っており、NLM(National Library of Medicine, 米国国立医学図書館)は2020年5月18日に旧インターフェース(Legacy PubMed)が消滅すると報じています。
New PubMed to Replace Legacy PubMed in Mid-May.
NLM Tech Bull. 2020 Mar-Apr;(433):e5.
慣れているからとLegacy PubMedを使い続けている方、そろそろNew PubMedにシフトした方がよいかもしれません。
私が現時点でおすすめする日本語で作成された操作の基本案内は、統合TV(https://togotv.dbcls.jp/)が作成した動画です。
TOGO TVによるPubMed検索の基本(2020年4月現在)
ただし今後、この動画で扱う機能が変更されることがあるかもしれません。ですから、実際に検索を行う時は、本家のユーザーガイド(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/help/)を参照したほうがよいでしょう。ユーザーガイドは、PubMedのどのページにもリンクがありますので、検索しながら確認することができます。
PubMedトップページでのユーザーガイドの位置
PubMed検索ページでのユーザーガイドの位置
PubMedで "本当に" 探せていますか?
ところで。
医療職に馴染みの深いPubMedですが、私にはかねてから疑問があります。それは、
みんな本当にPubMedが便利だと思って使ってるのか
です。言い換えると、今回の記事の対象となる
解決や考え方の道筋を与えてくれるような論文をPubMedでぱぱっと探せているのだろうか
です。もちろん、ライブラリアンの出る幕などないくらいの文献検索に長けた方なら問題はまったくないでしょう。
でも。
5,000誌以上に収載された3,000万件という文献の集合です。
ヘルスサイエンスの全領域が対象です。
いわゆる論文だけではなく、教科書や学会抄録なども含まれています。
タイムラグなどにより最新の文献が登録されていないこともあります。
検索に使える演算子はAND/OR/NOTのみで近接演算子は使えません。
そもそも世界中のすべての医学文献をPubMedで探せるわけではありません。もちろん他のデータベースでも同じですし、データベースのみで検索できるわけでもありません。ですから、本来は複数のリソースにあたることが大切なのですが、目の前の患者のために効率よく探索することもまた大切です(こういう時はぜひ6Sピラミッドの活用と共にライブラリアンを使ってほしいとも思っています)。
そこで、今回はPubMedではなく「あらかじめ一定の評価を受けた個別の研究を探すリソース」の例を紹介します。
〈今回紹介したリソースは2020年4月13日までにアクセスと検索確認をしています〉
読者コメント