11月号から新しく連載している「これってどうなの?〜感染管理の脇道〜」の第5回目となります。
これは感染管理における、「これってどうなの?」というもの、特に教科書などであまり解説されないような”脇道のエビデンス”についてまとめていこうという連載になっております。
どうぞお付き合いください。
さて、読者の皆様はこれまで様々な予防接種を受けてこられたことと思います。
ものにもよりますが大抵は腕の外側に注射されることが多いですよね。
針を刺されて「あれ?そんなに痛くない?」と思っていると薬液を注入される時に痛みが強まって「ちゃんと痛いじゃん…」と少し落ち込むという悲しい早とちりをしたことがあるのは私だけではないはず…。
さてこの時、おそらく殆どの場合は注射をされる前に皮膚の消毒もされていたことと思います。
一般的に皮下注射前には皮膚の消毒が行われているのですが、「実際のところあまり意味がないのでは?」という指摘もされていたりします。
感覚的には針を刺される前ぐらいは消毒して欲しいような気もしますが実際の研究を見てみましょう。
【目次】
・「皮下注射前のアルコール消毒」はもう古い?
・”消毒不要”についてのスタッフの捉え方とガイドライン
【「皮下注射前のアルコール消毒」はもう古い?】
実際に皮下注射におけるアルコール消毒のエビデンスについて検索してみましょう。
pubmedで検索する時、色々なテクニックがあるのですが、こういう時は「Meshターム」というものを使うと非常に捗ります。
例えば「おにぎり」という言葉がありますが、この他に「おむすび」と言ったり、「握り飯」と言ったりもしますよね。
でも検索する時に「おにぎり」と検索したらヒットするのは基本的には「おにぎり」だけです。
これは医学用語にも同じことが言えます。
例えば「がん」のことをcancerと言いますが、carcinomaとも言ったりします。
つまりこういう時に何が起こるのかというと「がんのことを検索したいからどっちも該当するなら全部ヒットして欲しい。だけど実際にヒットするのは検索した用語だけ」ということになってしまいます。
これでは非常に不便です。
そこで出てくるのが前述のMeshタームです。
Meshタームは簡単に言うとおにぎりやおむすび、握り飯の全てをまとめたキーワードのことで、これで検索すると該当する言葉のすべてがヒットするようになります。
調べてみると、皮下注射のMeshタームは「Injections, Subcutaneous」、消毒のMeshタームは「Disinfection」でした。
これらを一緒に検索すると「皮下注射」と「消毒」をMeshタームで検索しつつこの二つがヒットする論文が見つかります。
2020年3月7日時点では、「皮下注射」と「消毒」のMeshタームをAND検索すると14件ヒットします。
しかし、皮下注射前の皮膚の消毒の有効性を評価した研究は少なく、あってもかなり古い研究が多いということがわかりました。
では実際の研究を読んでいきましょう。
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