はじめに
つい先日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で緊急事態宣言が発令されました(4月11日に原稿を書いています)。本稿が地域医療ジャーナル5月号に掲載される頃には感染拡大の抑え込みに成功していることを祈りながら、筆を走らせております(PC打ち込みですが)。
私は薬局勤務のため新型コロナウイルス感染疑いの患者さんと接することはほとんどないのですが、新型コロナウイルス関連のWeb講演の拝聴、関連文献のチェックなどに努めていたところ、新型コロナウイルスに感染する夢を見てしまいました。夢の中で、重篤化して唸っている私…。みなさんは楽しい夢を見ていますか?
さて、今回はマスクについての研究を取り上げます。医療用マスクの充足がままならない状況下ということもあり、布マスクが有効なのかどうか気になりますよね。では、ねこ薬局に舞台をうつして、ねこ薬剤師たちのゆる~いやりとりをお楽しみください!
ねこでも読める医学論文 第21話「医療用マスクと布マスクの効果は?」
みに丸「ううう~~…」
はかせ「朝っぱらからどうしたんだい?まさか熱があるのかい?新型コロナだったら大変だ!出勤しちゃイカン!自宅療養だ!」
みに丸「え?熱なんてないですよ。自粛モードで家に閉じこもっていたらストレスがたまってしまって、ケミカルブラザーズのDVDを見ながら、踊ってたんですよ。テンションが上がって、こたつの上に登って踊っていたら、足を滑らせて床に転げ落ちてしまったんです。あ~~、痛ぇ~~~」
はかせ「あ、そう…。元気そうでなによりだよ」
みに丸「そういえば、医療用マスクっていつになったら店頭に並ぶんでしょうか…?」
はかせ「ねこ薬局への入荷の予定はないけど、最前線で感染者の治療にあたっている病院にマスクを届ける方が重要だと思うよ。入荷しないのはしょうがないよ」
みに丸「ですよね…。ところで、布マスクってどうなんでしょうか?有効なんですかね?」
はかせ「うーん…。現時点では、一般人を対象とした新型コロナ対策としての布マスクの有効性を検証した試験は実施されていないんじゃないかなぁ…。新型コロナが対象じゃないけど、布マスクのエビデンスについては有名なのがある。院内での呼吸器感染症の予防効果を検証したランダム化比較試験だ[1]。さっそく読んでみようか」
[1] MacIntyre CR, Seale H, Dung TC, et al. A cluster randomised trial of cloth masks compared with medical masks in healthcare workers. BMJ Open. 2015;5(4):e006577. Published 2015 Apr 22.PMID:25903751
対象論文はこちらからダウンロードできます。ぜひ手元に論文を用意して、ねこ薬剤師たちと一緒に勉強しましょう!
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4420971/pdf/bmjopen-2014-006577.pdf
~研究の背景~
はかせ「まずは研究の背景をチェックだ。1ページの右下に『Introduction(イントロダクション)』という項目がある。この項目に研究を行うことになった経緯が書いてあるんだ」
みに丸「研究の目的とかもここに書いてあるんですよね」
はかせ「そのとおり。ざっとまとめると、これまで医療従事者の保護のために様々な種類の布や綿のマスク(以下、布マスク)が使用されてきた。医療財源が豊富な環境では、布マスクの代わりとして、使い捨ての医療用/サージカルマスク(以下、医療用マスク)が使われるようになったが、布マスクは依然として世界的に広く使用されている。しかし、布マスクの臨床的有効性に関する研究はほとんど実施されていないそうだ」
みに丸「なるほど。2ページの『Introduction』の最後にこの研究の目的が書いてありますね。感染症のリスクの高い病棟で働く医療従事者(HCW:healthcare workers)を対象に、医療用マスクと布マスクの感染症予防効果を比較することがこの研究の目的だそうです」
はかせ「そうだね。イントロダクションを見れば、これまでの経緯がわかる。翻訳サイトを利用してもいいので、軽く目を通しておこう」
みに丸「OKです!では、研究の中身をチェックしましょう!」
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