地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2020年05月号 vol.6(5)

新型コロナ感染拡大下でのトリアージをめぐる米国の議論を覗いてみた

2020年04月26日 14:46 by spitzibara
2020年04月26日 14:46 by spitzibara

 私が理事に名前を連ねる日本ケアラー連盟では、新型コロナウィルス感染の拡大を受け、3月21日(土)から30日(月)までインターネット上でケアラーへの緊急アンケートを実施しました。381名からの回答の取りまとめ(速報)はこちら。27日には、緊急アピール「新型コロナ感染症とケアラー緊急支援対策のための緊急アピール」を出し、その後もケアラーのための情報サイトを立ち上げて「ケアラーのバトン」緊急引継ぎシート(2020年4月16日版)を提示するなど、ケアラー支援のための活動を続けております。

 これら一連の動きの中で、私が大きく揺さぶられた出来事がありました。アンケートの自由記述に「トリアージを導入してほしい」と書かれたケアラーが2人あったのです。いずれも要介護状態の家族は命のリスクが高いのだから、と案じる思いが滲むコメントでした。トリアージについての、なんと切ない誤解なのだろう……と茫然としました。イタリアの医療崩壊で、高齢者がICUや時には病院への受け入れすら拒まれているという報道がチラホラし始めた頃のことです。

 そして頭に浮かんだのが、ブックマークしたままになっているNEJMの2つの論文でした。それぞれ、これまで拙著で言及してきた米国の著名な生命倫理学者/医師2人を主著者として、新型コロナ感染拡大下における医療資源分配とトリアージを論じたものです。目についてとりあえずブックマークしたものの、私自身、重い障害のために風邪をひいても酸素マスクが必要になる娘を持つ身。なかなか手を出す気になれずにいました。けれど、トリアージを望むケアラーのあまりに切なく悲しい誤解を前にして、これはあの論文を読むしかないな、と覚悟を決めました。

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