地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2020年08月号 vol.6(8)

便秘薬の定番!? 酸化マグネシウムの有効性・安全性について

2020年07月26日 12:58 by syuichiao
2020年07月26日 12:58 by syuichiao

 「なんとなく便秘気味だなぁ……」という症状は、誰しもが経験する身近な健康問題だと思います。しかしながら、こうした健康問題は「便秘気味」という言葉に象徴されるように、とても曖昧な概念のように思います。1日排便がないと、何となくすっきりしない、という気持ちを抱く人も多いと思いますが、この「すっきりしない」という感覚を、便秘と言って良いのでしょうか。この程度の症状なら明確な健康問題と意識することもなく、医療機関を受診する人も少ないように思います。

 実際、毎日排便がある人の9%、週に4~6回排便がある人の30.6%で便秘を訴えていたとの報告【1】があり、便秘という言葉は、必ずしも排便がない状態だけを指しているわけではありません。一口に便秘といっても、そこに含まれる意味合いは、人それぞれで大きく異なっています。そのような中で、医療機関にかかるほどでもないけれども、「便秘気味」を解消したいと思うことは多いと思います。一般的に便秘といった場合、食習慣の見直しや市販薬で様子を見ることがほとんどでしょう。

  ところで、日本で使用できる便秘薬の中でも酸化マグネシウム(MgO)という成分は、投与量調整の容易さ、価格の安さなどから、医療現場のみならず、市販薬としても広く使われています。その歴史は古く、日本に最初に持ち込まれたのは、1823年とのこと。フィリップ・フランツ・フォン・シーボルトというドイツ人医師によって持ち込まれたとされています【2】。同薬は1950年代から使用されるようになり、2013年では約1,000万人が使用していました【3】。

  酸化マグネシウムは、その名の通りマグネシウムの酸化物で、化学式は「MgO」、分子量40.3というと非常に単純な化合物です。白色または灰色の個体で、カマと呼ばれたりもします。胃粘膜を刺激する過剰な胃酸を中和し、胃・十二指腸潰瘍や胃炎などにともなう症状の改善を期待して用いられることもありますが、その効果は一過性で持続性は期待できません【4】。

  酸化マグネシウムは非常に単純な化合物で、多くの使用実績があるにも関わらず、同薬の有効性・安全性に関する論文報告がなされるようになったのは、つい最近のことです。今回は、便秘症状に対する酸化マグネシウムの有効性・安全性について、文献的考察をしていきたいと思います。

【参考文献】
【1】Am J Public Health. 1990 Feb;80(2):185-9. PMID: 2297063.
【2】健栄製薬:便秘に酸化マグネシウムが効く理由とは?
https://general.kenei-pharm.com/learn/constipation/3844/
【3】Ministry of Health, Labour and Walfare. Hypermagnesaemia caused by magnesium oxide;Pharmaceuticals and Medical Devices Safety Information. 2015 328:5–8. (https://www.pmda.go.jp/files/000208994.pdf#page=5
【4】Aliment Pharmacol Ther. 1998 Apr;12(4):337-42. PMID: 9690722

 

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