地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2021年03月号 vol.7(3)

「うま味」のエビデンスーうま味の上手い活用の仕方-

2021年03月09日 17:35 by syuichiao

 同じ料理を食べていても、味の感じ方は人それぞれだと思います。ある人にとっては味わい深いリンゴも、別の誰かにとっては酸味の強さに顔をしかめてしまうようなリンゴかもしれません。ただ、生命の維持に重要な役割を果たしているという観点で言えば、味覚はあらゆる人(もしくは動物)にとって共通した感覚の一つと言えるでしょう。例えば、甘味は生命活動に必要なエネルギー源であるブドウ糖を、塩味は体内の水分バランスを維持するために必要なナトリウムを、酸味は食剤の腐敗状況を、苦みは生命にとって有害な物質の存在を知覚する役割を担っています【1】。

 ところで、僕たちが感じる味覚は甘味、苦味、塩味、酸味だけでしょうか。味を的確に言葉にすること自体が難しいと言えなくもないですが、これら4つの感覚だけで味の全てを表現することには無理があるでしょう。少なくとも「コクがある」、「出汁が効いている」、あるいは「風味がある」という味覚は、この4つの味覚とは異なる味わいがあるはずです。そして、この味わいこそが5つ目の味覚、「うま味」なのです。

【うま味の発見】
 世界中の人々が日々、「うま味」を味わっていたにも関わらず、この味覚が広く認識にされるようになったのは1900年代の後半、つまり最近の出来事です。実はうま味を初めて発見したのは東京帝国大学理学部の池田菊苗教授でした【2】【3】。

 日本料理において、昆布は古くから出汁の材料として使われてきました。1907年、池田教授は約38㎏の昆布から煮汁を取り、うま味成分の一つであるグルタミン酸を得ることに成功します。ちなみにこのグルタミン酸の製法は、1908年4月に「グルタミン酸を主要成分とする調味料製造法」として特許を出願し、同年7月25日に特許登録されています。そして、池田教授から事業経営を任された鈴木三郎助氏により「味の素」と名付けられ、商品として製造販売されるようになります。これが僕たちの食卓におなじみの「味の素」、そして味の素株式会社の始まりです【4】。

 また、1913年には池田教授の弟子であった小玉新太郎氏は、カツオのうま味成分がイノシン酸であることを発見しました【5】。さらに1957年には、国中明氏がシイタケの中から抽出したグアニル酸が、新たなうま味成分であることを発見します【6】。このように、うま味に関する発見の多くは日本人によるものであり、英語でも「Umami」と表記します。今回は、うま味に関する論文情報を参照しながら、この味覚が人の健康状態にどのような影響を及ぼしうるのかを紐解き、日常生活における うま味の活用のヒントをまとめていきたいと思います。

【参考文献】
【1】Ann Saudi Med. May-Jun 2013;33(3):217-22. PMID: 23793421
【2】Journal of the Tokyo Chemical Society. 1908;30:820–836.(Chem Senses. 2002 Nov;27(9):847-9. PMID: 12438213)
【3】Chem Senses. 2002 Nov;27(9):843-4. PMID: 12438211
【4】東京大学大学院 理学系研究科・理学部公式サイト うま味の発見と池田菊苗教授(https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/story/newsletter/treasure/02.html
【5】Journal of the Chemical Society of Tokyo. 1913;34:751–757.DOI;10.1246/nikkashi1880.34.751
【6】J. Agric. Chem. Soc. Jpn.34:487–492.DOI:10.1271/nogeikagaku1924.34.6_489
 
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