7月10日の夕刻、キッチンで肉じゃが用のジャガイモの皮を剝いていたspitzibaraは、「なに? PAとな?」とつぶやくや、ジャガイモを放り出し、リビングのTVの前に急行しました。たまたまついていたTVから、「PA」「Physician Assistant」という言葉が聞こえてきたからです。ちょうど、米国の医療現場にいるPAなる職種とは、いったいどのような存在なのか、そのうちに調べておこうと考えていた矢先だったのです。
が、番組を見ていると、「これは……」と絶句し、やがて「ええ~っ。これはいけんじゃろ~!」と大声を放ってしまいました。「日本でも導入され始めている素晴らしい新職種」として紹介されていたのは、米国のPAとは似て非なる、ど素人の若者たちでした。
紹介されているのは、東京都板橋区のやまと診療所が4月に立ち上げた「おうちにかえろう。病院」。同病院では、診療所が「独自に養成」した、まったく無資格の若者たちをPAと称し、40人ほど雇っているとのこと。研修期間は「およそ3年」。その後、患者を「担当」し、患者宅を「訪問」しては終末期の「患者と家族を支える」のだとか。それにしても、ど素人が「意思決定支援」も「グリーフケア」も担っている、と平気で紹介できる番組の意識って、どうよ――?
同診療所の安井佑理事長は、番組の取材に対して“PA”を「在宅医療を支えるハブとなる存在」「無資格で患者の自分らしい生活を支える職種」と形容します。もちろん彼らの仕事には診療報酬はつきませんが、彼らの活躍によって病院の担当件数が一昨年に比べて2倍に増え、それだけ収益が上がったので、人件費は賄えているとのこと(それに素人なんだから、給料だって安くてすむもんね……とは、spitzibaraがTVに向かってつぶやいた独り言)。やまと診療所のHPのスタッフ紹介ページを見ると、看護師はいないようです。
番組では、最後に「特別な資格が必要ないので、関心を持った人が挑戦しやすい仕事。大事なのは人柄」と盛り上げ、まさにコロナで自宅で死ぬ人が増えてきた時代に、必要とされている職種という総括でした。
在宅医療に携わるさまざまな専門職が、我らの専門性を一体なんと心得おる! と逆上しても不思議のない内容だと私は思うのですが、読者のみなさんはどのように感じられるでしょうか。問題の特集は以下で見ることができますので、ぜひ。
TBS報道特集「素人からの挑戦 在宅医療を支える“PA”」 2021年7月10日放送
また、ネット上には、同じ取り組みを紹介した2019年の記事もありました。
「『家で死にたい』を叶える在宅医療、普及のカギを握る新職種『PA』とは」 吉田由紀子 2019.9.26 Diamond Online
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