JAMAの名物コラム:A Pieace of My Mind
JAMA(米国医師会雑誌)という雑誌をご存じだと思います。米国医師会(American Medical Association:AMA)が発行する臨床雑誌で、1883年創刊。アメリカで最も権威のある医学・医療雑誌のひとつです。
医学図書館員だったころ、わたしはこの雑誌の受け入れが楽しみでした。一つには、毎号の表紙が絵画だったこと。もう一つは、「A Pieace of My Mind」と題するコラムがあったことです。1980年から始まったこの名物コラムは40数年経た今も続いています。現在では、JAMAサイトでも公開しています。
A Piece of My Mind
https://jamanetwork.com/collections/44046/a-piece-of-my-mind
1988年から2000年の間にこのコラムに掲載された約800の作品から選りすぐりの100点を選んで編まれのが、以下の本です。
医者が心をひらくとき -A Pieace of My Mind 上・下巻
ロクサーヌ・K・ヤング 編 李 啓充 訳
医学書院 2002年
紹介 『医者が心をひらくとき』(下原康子)
http://shimohara.net/nitona/bungaku/09.htm
医師たちが体験を書く理由
医師たちは、なぜリスクを冒してまで自らの体験を打ち明けるのでしょうか。編者は次のような理由を挙げています。
・書くという単純な行為は、それだけでカタルシスになる。
・書くことによって、自らが抱えている問題、罪悪感、恐怖、挫折感と直面し、心のうちで折り合いをつけるために。
・変貌してしまった現在の医療に対する自分の思いを分析し、それを表現する必要に駆られて。
・技術偏重で損なわれてしまった患者-医師関係に対するやるせない思い、二度と戻らない「昔の日々」の述懐。
・人間にとって究極の個人的な体験である「死」。その劇的瞬間の傍らにいた者としての体験を表現するために。
・死だけでなく生についても、理解を深める手助けをしてくれた患者(私のヒーローたち)を称え、感謝を伝えたいという思いにかられて。
・自分自身に、そして他の医師たちに、自分たちが、なぜつらい「医」という仕事にかかわるのかという理由を再認識させ、医師であることの喜びを伝えるために。
上の紹介では、2つのエッセイ(医学生と女性患者)を引用しましたが、ほかにも素晴らしい作品がたくさんあります。
本号では、上巻の「医師になること/医師であること」に含まれる3つの作品をダイジェストでご紹介します。
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