地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2022年05月号 vol.8(5)

医者が心をひらくとき ー医師にも彼らの物語があるー (2)

2022年04月26日 10:46 by shimohara-yasuko
2022年04月26日 10:46 by shimohara-yasuko

 

前号にひき続き、以下の本の下巻に収められた作品のなかから、3編をダイジェストでご紹介します。

 

医者が心をひらくとき -A Pieace of My Mind 上・下巻
ロクサーヌ・K・ヤング 編  李 啓充 訳 
医学書院 2002年 

 

告知 (医師)

彼女はサンルームに一人座り、輝く朝日を浴びて豊かな黒髪を梳いていた。彼女を受け持つ腫瘍専門医として、私は、彼女に癌の告知しなければならなかった。彼女は私の途方にくれた顔をみつめ、静かに私が口を開くのを待った。

訪れる死の前触れを告げることも、医者の役割の一つだ。そのスタイルは千差万別だが、しかし、上手にこの役割を果たすことができる医者などいない。

もうこれ以上、彼女の顔を黙って見つづけることはできなかった。

「生検の結果が戻りました」と私は言った。

「あら、先生が難しいお顔をしていらしたので、何の用事かと思っていたところでした。それで、結果は?」

私は、彼女の目をみつめようと全力を振り絞った。彼女の目には、私への信頼が読み取れた。と同時に、彼女が答えをすでに察していることが書いてあった。

「生検は陽性でした」

「陽性」と、額にしわを寄せながら、彼女が反復した。

「でも、私が死ぬという結果が、なぜ、陽性だなんて言えるんでしょう?」

この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

オープンダイアローグとドストエフスキー ドストエフスキーと医学・特別編

2022年10月号 vol.8(10)

がんと闘った誇り高きアマゾネス ③上坂冬子

2022年09月号 vol.8(9)

がんと闘った誇り高きアマゾネス ②柳原和子

2022年08月号 vol.8(8)

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

2022年10月号 vol.8(10)

答えは見つからない。 だからこそ、 答えのない疑問に立ち向かおうとする。 もっ…

2022年08月号 vol.8(8)

物事には余白が大事。 荷物をめいっぱいに詰め込み、 あふれてしまっています。 …