2016年に積極的安楽死と医師幇助自殺の両方をMedical Aid in Dying(MAiD)と総称して合法化したカナダで、相次いで気がかりな事例が報道され、これではPolitical Assistance in Dyingだという批判の声が出ているので、今月はそれら3つの事例について。
カナダの近況については、2021年6月号の記事「世界の安楽死と医師幇助自殺の潮流 7」他で簡単に触れていますが、まず今回読んだ記事から目に付いたデータを挙げておくと、2019年のMAiD死者は2,425人で、カナダの死者全体の1.9%に当たります。2020年には7,383人、2.4%に増えました。この2年間の申請者の3分の2は癌患者でした。最終的にMAiDの実施に至ったのは申請者の4分の3でした。
2016年6月の合法化の際には、対象者は死が「合理的に予見可能reasonably foreseeable」な人、つまり終末期の人に限定されていました。その後、ケベック州の訴訟で最高裁がその限定を違憲と判断したため、2021年3月にカナダ政府はその要件を撤廃し、障害や不治の病があり耐えがたい苦痛のある人にも安楽死への道を開きました。カナダでは、以前から認められていた終末期の人のことをTrack One の患者と呼び、この時から対象となった非終末期の人のことをTrack Twoの患者と呼ぶことになりました。終末期の人では手続き期間が短いため、前者はFast Trackとも呼ばれるようです。
この時、精神障害のみを理由に安楽死を希望する人については、さらなる議論が必要として2年間の猶予を置くこととなりました。現在、上下院で特別合同委員会が設置されて、2023年6月の期限を睨みつつ審議が進められているところです。
そんな最中に相次いで報道されているのが、化学物質過敏症など環境の調整によって症状を軽減できるはずの人をはじめ、医療と福祉が十分に受けられていない人たちの安楽死の申請が医師らによって認められた事例。最近の報道から3例をご紹介しましょう。
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