塩分(ナトリウム)をとりすぎると健康に良くないといわれますが、2021年に報告された大規模な生態学的研究では、ナトリウムの摂取量が多いほど、死亡リスクが低下するという意外な結果も示されています【1】。また、これまでに報告されているナトリウムと死亡リスクの関連性を検討した観察研究では、関連性を示したグラフが、右肩上がりの直線で近似できる線形相関だけでなく、J字型の相関や逆相関の関連も示されており、一貫した解析データは示されていません【2】~【4】。
解析データが一貫しない理由には、いくつかの原因を挙げることができます。例えば、食事からのナトリウム摂取量は日々変化するものであり、ある時点におけるナトリウム摂取量が、生涯にわたり不変であり続ける可能性は低いでしょう。高血圧を発症した、あるいは友人が脳卒中で寝たきりになった、など様々な体験や経験が、健康への関心を高め、塩分摂取を含めた食事内容の見直しを促す可能性があります。
また、食事からのナトリウム摂取量が多い人では、摂取カロリー数も高く、肥満傾向の人が多い可能性もあります【5】。つまり、ナトリウムの摂取量が多い人は、潜在的に健康リスクも高いといえるでしょう。ナトリウム摂取と死亡リスクの関連性を評価する上では、膨大な数の交絡因子の影響を考慮しなければなりません。このような交絡の影響の度合いが、研究セッティングごとに異なり、冒頭にお示ししたような解析データの非一貫性をもたらしていると考察できます。
今回の記事では、ナトリウムの摂取量と健康リスクについて、最新の研究論文を踏まえながら、目安となる塩分摂取量や減塩を目的とした「代替塩」の効果について解説します。
【参考文献】
【1】Eur Heart J. 2021 Jun 1;42(21):2103-2112. PMID: 33351135
【2】J Am Coll Cardiol. 2016 Oct 11;68(15):1609-1617. PMID: 27712772
【3】N Engl J Med. 2014 Aug 14;371(7):612-23. PMID: 25119607
【4】Lancet. 1998 Mar 14;351(9105):781-5 PMID: 9519949
【5】Am J Clin Nutr. 2019 Jul 1;110(1):34-40 PMID: 31111867
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