地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2022年10月号 vol.8(10)

オープンダイアローグとドストエフスキー ドストエフスキーと医学・特別編

2022年10月20日 06:34 by shimohara-yasuko
2022年10月20日 06:34 by shimohara-yasuko

はじめに

今年8月8日、精神科医の中井久夫さんが88年の生涯を終えられました。もう、この世のどこにも中井さんがおられないと思うたびにさびしさがこみあげてきます。

敬愛と感謝の思いを込めて、以下の一文を捧げます。

中井久夫さんを読む(康子の小窓 読書日記)

中井さんに会いたくて、ウエブの中に、中井さんの映像と声を探しまわりました。その最中、偶然目にとまったのが、「オープンダイアローグ」ということばでした。初耳でしたが、瞬間的に、なじみのある「ナカイマジック」点火の予感がしました。

おりしも、精神科医の斎藤環さんの追悼文を拝読してグッときました。「ナカイマジック」は当たっていました。

次のように書かれています。

私が目下啓発に取り組んでいる「オープンダイアローグ」は精神疾患に対する統合的なアプローチだが、その対話実践も「治療」より「ケア」としてなされる。中井先生の著作には、「オープンダイアローグ」の思想に通底する発想が実に多い。中井先生の膨大な仕事から、「対話とケア」にまつわる知恵を継承することを、私は「宿題」として自らに課した。

追悼・中井久夫さん<ケアの時代を予見したひと>斎藤環さん寄稿
毎日新聞 2022年9月4日(日)

今回、わたしのテーマは「オープンダイアローグとドストエフスキー」です。我田引水と思われそうですが、そうありません。オープンダイアローグの主たる理論的柱がロシアの思想家・文藝批評家のミハイル・バフチンが提唱した「対話理論」と「ポリフォニー論」であるという評価は定着しています。このユニークな概念は、バフチンが『ドストエフスキイ論 創作方法の諸問題』という本のなかで提唱したものです。「理論」は苦手なわたしですが、ドストエフスキーに関係があるとなれば、スルーできません。にわか勉強ながら、ドストエフスキーの純粋読者の立場から精いっぱいのコメントを試みました。

今回読んだ本
1.『オープンダイアローグとは何か』斎藤環 医学書院 2015
2.セイックラ教授らによる3論文(『オープンダイアローグとは何か』所収)
3.『まんが やってみたくなるオープンダイアローグ』斎藤環(著)水谷緑(画)医学書院 2021
4.『ドストエフスキイ論 創作方法の諸問題』M.バフチン著 新谷敬三郎訳 冬樹社 1968 注:『ドストエフスキーの詩学』M.バフチン著 望月哲男、鈴木淳一訳(ちくま学芸文庫 1995)は同書の2番目の訳。

過去10年間の「オープンダイアローグ」の文献検索(2022.9.10現在)

PubMed
 Open Dialogue  1086件(MeSHタームはPsychotherapy)
 Open Dialogue [Title/Abstract]  322件
医中誌Web
 オープンダイアローグ/AL 348件
 オープンダイアローグ/TH 132件 (医中誌統制語,上位シソーラス用語はナラティブセラピー)
 斎藤環/AL andオープンダイアローグ/AL  78件
図書&特集雑誌
 オープンダイアローグ/AL 66件(BOOKS 出版書誌データベース)

 

この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

76歳が読む『シンクロと自由』

2022年12月号 vol.8(12)

がんと闘った誇り高きアマゾネス ③上坂冬子

2022年09月号 vol.8(9)

がんと闘った誇り高きアマゾネス ②柳原和子

2022年08月号 vol.8(8)

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

2022年11月号 vol.8(11)

新型コロナウイルス感染症の流行とともに、 専門家の発信する医療情報の質について…