地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2022年11月号 vol.8(11)

患者にとっての「エビデンス」とは

2022年10月29日 00:53 by shimohara-yasuko
2022年10月29日 00:53 by shimohara-yasuko

はじめに

現実とつながってこそ「エビデンス」が「エビデンス」たりえます。そのために欠かせないのが「合意形成」ですが、そこに到達するのは容易ではありません。その主たる要因の一つが、専門家と非専門家、医師と患者間の「情報の非対称」であることは否めません。

医学図書館員のわたしにとって、「EBM」「エビデンス」という言葉は「錦の御旗」でした。EBMを支えるロジスティックスを担うという司書の役割に誇りを覚えたものです。やがて、自分や家族や友人のためにも、病気のエビデンス情報を探すようになりました。たいていの人はその存在さえ知らない学術情報の巨大倉庫を、医療者と同じ環境、同じ条件で、制限なく利用したのです。つくづく、恵まれていたと思います。

退職後の2006年、がん専門病院の患者図書室を立ち上げる機会に恵まれました。医学図書館員の経験をフル活用して、「すべての国民は、いつでもその必要とする資料を入手し利用する権利を有する」という「図書館の理念」に応えるべく力を尽くしたいと思いました。

「患者図書室サービス」で使うツールとして、また、時勢に遅れていくわたしの知識を(現役の医学図書館員の助けを借りて)更新することを目的に、以下のサイトを開設しました。

医学図書館員が選ぶ 患者・家族のための医学情報ウェブサイト

このサイトの中で、わたしが「学術情報」(具体的には、医学専門書、医学専門雑誌、医学論文、EBM情報、それらを検索する文献データベース など)にこだわったのは、そこが「エビデンス」の在処だからです。

「患者中心の医療」の実現のためには患者と医師の双方の「協働」が不可欠と言われています。現在、「協働」における医師側の努力については見聞きしますが、一方で、患者側に求められる行動についてはあまり議論されないようです。

患者側が努力できることの一つは「学ぶこと」だと思います。自分や家族のために情報を探したわたしの経験や「患者図書室」で出会った患者さんたちの言動の中から「情報は当事者本人が探すのがベストである」という確信を深めました。

「エビデンスと現実をつなぐ」ために医療者と患者の双方が具体的にできること。患者図書室における「患者さんの声」のなかにそのヒントを探したいと思います。

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