聖隷佐倉市民病院図書室 山口直比古
1 はじめに
文芸雑誌である「小説新潮」の2022年9月号は医療小説特集で、南杏子さんや日下部羊さんなどの医師である作家による、医療に関わる短編小説が何篇か掲載されています。そうした小説と同時に「ルポ患者たちの図書室」と題されたルポルタージュ記事が掲載され、静岡県立こども病院の「わくわくぶんこ」と、東邦大学大森病院にある「からだのとしょしつ」の二つの患者図書室が紹介されています1)。一般の文芸誌に「患者図書室」が紹介されるのは大変に珍しく、病気を抱えて病院通いをされている方たちや健康な方にも、病院の中に患者さんのための図書室がある、ということを知っていただくよい機会になったかと思います。
では、何故病院に患者さんのための図書室(館)があるのでしょうか。
病気になった時には、自分や家族の行く末など、大きな不安が生じます。お医者さんの言っていることはよくわからないし、直ぐには心の整理がつきません。そのような時に役立つのが、病気のことや治療のこと、そして先々のこと(「予後」と言います)についての「情報」です。患者さんがその「情報」を得るにはどうすればよいのでしょうか。情報を得られる「場所」へ行き、情報を提供してくれる、あるいは情報入手を手伝ってくれる「人」と対話することが大切です。そうした場所が「患者図書室」なのです。
患者さんのための図書室(館)には様々な名前が付けられています。情報プラザ、情報ステーション、健康ライブラリー、など様々です。慶應大学病院の1階に設けられている「健康情報ひろば」などもわかりやすい名前です2)。聖路加国際病院ではより広い意味付けをした「さわやか学習センター」と名付けられた患者さんのための場所があります3)。いずれの場合も目指すものは一緒です。ここでは「患者図書室」と呼ぶことにします。
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