僕たちは「真実」だと確信している情報に基づいて意思決定を行っている。少なくとも「ウソ」だと確信して物事の最終判断をすることは希であろう。しかし、この場合の真実とは「相対的真実」であって「絶対的真実」ではない。ある人にとって、真実だと確信されるものが、別の誰かにとって真実だと確信されないことは、コロナ禍における医療・健康情報に対する認識や価値観の多様性を踏まえれば理解しやすいと思われる。そういう意味では、僕たちの日常生活を支えている真実とは相対的真実のことであり、絶対的真実ではない。
一方で、ヘルスケア領域における「エビデンス」と呼ばれる情報群は、客観的な統計データであることを踏まえれば、相対的真実というよりは絶対的真実に近いものであろう。絶対的真実を探求する営みこそが学術研究であり、その成果をまとめたエビデンスは、少なくとも相対的真実ではない。エビデンスと現実の隔たりとは、真実に対する相対性と絶対性のグラデーションに他ならない。
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