地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2022年11月号 vol.8(11)

インフォメーショニストを育成しよう

2022年10月28日 22:00 by bycomet
2022年10月28日 22:00 by bycomet

「この情報検索、誰かやってくれないかな。」
時間のない診察室で、日々感じることが解消できないでしょうか。
インフォメーショニスト(Clinical informationist)を育成し、医療チームに組み込んでいきたい。

 

 

特集『エビデンスと現実をつなぐ』に寄せて、先月号記事「医療で未解決となる60%の疑問を少しでも解消する方法」の続編を書いてみました。

 

Gordon Guyatt教授らの横断研究

「ジャスト・イン・タイム」プロジェクトの他に研究はないでしょうか。Connected Papers のビジュアルグラフで関連論文を検索したところ、2017年の研究がヒットしました。

Izcovich A, Criniti JM, Popoff F, Ragusa MA, Gigler C, Gonzalez Malla C, Clavijo M, Manzotti M, Diaz M, Catalano HN, Neumann I, Guyatt G. Answering medical questions at the point of care: a cross-sectional study comparing rapid decisions based on PubMed and Epistemonikos searches with evidence-based recommendations developed with the GRADE approach. BMJ Open. 2017 Aug 7;7(8):e016113. doi: 10.1136/bmjopen-2017-016113. PMID: 28790039; PMCID: PMC5629721.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5629721/

抄録はこちら。

背景:臨床医にとって、最新のエビデンスを用いて臨床判断を行うことは、依然として困難な課題である。臨床医の日々の疑問に対して適切な推奨を答えられるような、信頼できる臨床実践ガイドラインが少ないことから、臨床判断支援システム(clinical decision support systems: 疑問の特定と回答を支援するシステム)が魅力的な選択肢として浮上してきた。しかし、このようなシステムで得られる推奨の信頼性については不明である。

目的:タイムリーなレコメンデーションを提供する質問応答システムの信頼性を評価する。

デザイン:横断研究

方法:入院患者管理に関連する100の臨床質問に対して、2つの迅速回答法で提供された回答を「ゴールドスタンダード」勧告と比較した。1つはPubMed、もう1つはEpistemonikosデータベースを利用したものである。ゴールドスタンダードは、信頼できるエビデンスに基づく公表された推奨、または入手できない場合は、GRADE(Grading of Recommendations Assessment, Development and Evaluation)アプローチに従って6人の臨床医からなるパネルが作成した推奨と定義した。迅速な戦略によって提供されたレコメンデーションは、誤解を招く可能性のあるものと妥当なものに分類された。また、検索やエビデンスサマリーツールの適切な導入により、誤解を招く可能性のある推奨が回避できたか否かを判断した。

結果:両方の迅速な手法により、100の質問すべてに回答することができた。得られた200のレコメンデーションのうち、6.5%(95%CI 3%~9.9%)が誤解を招く可能性があり、93.5%(95%CI 90%~96.9%)が妥当と分類された。誤解を招く可能性のある推奨13件のうち6件は、Epistemonikosマトリックスツールの適切な使用や所見の要約表の作成によって回避できた可能性がある。また、評価した迅速回答法の間に有意差は認められなかった。

結論:GRADEの手法に基づいた質問応答サービスは、実施可能であることが証明され、特定されたほとんどの質問に対して適切なガイダンスを提供することができた。我々のアプローチは、資源を管理し、患者ケアの方針を決定する関係者が、効率的かつ実現可能な方法で、エビデンスに基づく意思決定を改善するのに役立つと思われる。

 

MEDLINE論文データベース PubMed、システマティックレビューの網羅的検索ツール Epistemonikos などで迅速に得られる回答は信頼できるのか、という疑問を検証しています。

まさしく地にしっかりと足を着けた研究で、欲しかった研究!すごい!と思ったところ、EBM界隈ではかの有名な、カナダのマクマスター大学 Gordon Guyatt教授 らの研究グループからの報告でした。

すでに2017年に横断研究で検証していたとは、うーんさすが。

この続きは1ヶ月無料のお試し購読すると
読むことができます。

関連記事

[特別寄稿] エビデンスを説明することの不可能性

2022年11月号 vol.8(11)

モダニズムの解体に垣間見るエビデンスと現実の接点

2022年11月号 vol.8(11)

患者にとっての「エビデンス」とは

2022年11月号 vol.8(11)

読者コメント

コメントはまだありません。記者に感想や質問を送ってみましょう。

バックナンバー(もっと見る)

2023年3月号 vol.9(3)

「世界なんて簡単に変わるはずがない」 多くの人は疑いようのない事実だと考えてい…

2023年2月号 vol.9(2)

渦中にいると気づかないぐらい ささいな判断の違いが 後になって大きかったとわか…

2023年01月号 vol.9(1)

人らしさ それは人間が持つ、魅力的で神秘的なもの。 その聖域が 人工知能(AI…