聖隷佐倉市民病院図書室 山口直比古
1 はじめに
NHKのEテレに「きょうの健康」という健康情報番組があります。今年2023年1月に3回にわたり「がん絶対にしってほしい3選」というシリーズが放送されましたが、その2回目(1月17日)の放送は「信頼できるサイトは1割ほど」というサブタイトルでした。そして、「がん情報を紹介するWEBサイトを調べた研究では、ガイドラインに基づいた信頼できる情報を紹介しているのはわずか10%。むしろ有害な恐れのある情報を掲載しているものが30%強あるという結果であった」と紹介していました。
残念ながらその数字の根拠となる情報源については詳しくは紹介されてはいなかったのですが、まあそんな感じかなあという感想をもちました。しかし、情報源が信頼のおけるものであるかどうかは大切です。この情報の元となった情報源については「さいごに」の部分でタネアカシをすることにしましょう。
前回は、インターネット上にある医療・健康情報を得るための方法として、Googleを利用した、いわゆる「ググる」ということについてご紹介しました。その中で、上手に情報を得るためのいくつかのテクニックをご紹介したのですが、思いついた1つか2つのキーワードで検索しても「きょうの健康」で紹介されたような割合でしか正しい情報は得られないのかもしれません。つまり、得られた情報の中で正しい情報は10%程度、ということです。
Googleの中でも学術情報を集めたGoogle Scholarについてもご紹介しました。検索キーワードといっしょに「PDF」というキーワードも入れて検索すると、すぐに読める学術論文を探すこともできました。世の中には、そんな学術論文を集めたデータベースもありますので、最初からそちらを調べればすぐに専門的な論文を見つけて読むことができます。そこで今回は、学術雑誌に掲載されている「学術論文(医学論文)」を探してすぐに読む、という方法を紹介してみようと思います。
2 医学論文と文献データベース
医学論文に限らないのですが、学術雑誌に掲載される論文の大きな特徴の一つに「論文審査」というものがあります。研究者やお医者さんが、ある病気の診断方法や治療方法を試して「これは効果があるな!」と思った時には、論文を書いて学術的な雑誌に投稿します。それが学術雑誌に掲載されて多くの医療関係者や一般市民の方たちに読んでいただき、世の中に広まることが医学の進歩発展に繋がります。
投稿された論文原稿は、まずその研究の方法や結果が安全でありかつ有効であり他の患者さんにも適用できるものであるかどうかを第三者が読んで判断することにより、より効果のある方法であると認められ世の中へ広めるべきである、と判断された論文が雑誌に掲載されます。このプロセスを「論文審査」といいます。英語ではピアレビュー(Peer Review)と言いますが、Peerとは同僚のことをいいます。つまり、同じ専門分野の同僚たちが評価し、これは優れていると判断されたものが審査を通過し、学術雑誌に掲載されるのです。前回の最後にご紹介した「胃潰瘍」の治療法も、このようなピアレビューを経た論文により世界へ広まっていったのです。
そのような信頼性の高い論文を調べることのできる文献データベースをいくつかご紹介したいと思います。無料で誰でも利用できるものが中心ですが、有料での契約が必要なものも1つ紹介しています。
3 CiNii Research(https://cir.nii.ac.jp/)
国立情報学研究所が作成している、日本国内で発表された「雑誌論文」「図書」「博士論文」「報告書」などを集めたデータベースです。サイニーリサーチと呼びます。このうち「雑誌論文」は2,000万件程集められており無料で公開されています。
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