今年1月号の記事で、昨年12月2日に東京で開催された日本重症心身障害学会の市民公開講座で講演した際、最後の5分間を使って、コロナ禍での面会制限について思い切ったお願いをしてきたことをご報告しました。その続報です。
この講演後、さすがに会場はちょっと異様な空気になりました。先生方がどう反応すべきか困惑気味というか、受け止めるのか反発するのか、どっちに振れるか分からない微妙な空気。
ところが質疑になるや、マイクの前に出てきたのは、なんとウチの娘の主治医でした。これには度肝を抜かれました。若い女性の先生です。
笑顔で手を上げて軽やかに出てきて名乗った後で「海さんはうちの施設におられるので、少し補足させてください」。
あ、きっと面会制限を緩和できない言い訳をするんだな……。会場みんなが、そう思いました。その場合どこに話を落とすべきかを、私も考え始めました。ところが、
児玉さんはいつもこうして私たちに伝えてくださいます。でも、伝えてくださる親御さんばかりではないので、そうすると私たちは、ついこれでいいのだと考えてしまいます。
面会については重症児者の皆さんにとって実際に顔を見ること、触れ合うことの重要性は私たちも感じることと思います。これはそれぞれの施設で取り組むべき課題ですが、現場の気持ちだけではどうしても上手くいかない部分があり、重心学会で面会緩和に向けて何か提言などをいただければとても心強いです。
会場から拍手が起こり、続いてマイクの前に立ったのは、去年まで学会理事長だった医師。いろいろ温かい受け止めを語ってくださった後で、「今日聞いたことを、私は自分が園長をしている施設に持ち帰ります。みなさんも、ここで聞かれたことをそれぞれの職場にしっかり持ち帰ってください」
会場の空気が明らかに変わり、その後、学会幹部の先生方から前向きな発言が続きました。
公開講座が終わると、旧知の先生方が次々に温かい声をかけてくださいました。矢や礫が飛んでくるのを覚悟のうえで、腹をくくって「爆弾」を投下したはずだった私は、まるで奇跡を見ているような気分でした。
そして、それから2か月半が経った2月15日、日本重症心身障害学会から「重症心身障害病棟における面会に関しての、日本重症心身障害学会としての提言」が出されました。この記事を書きながら、私はまたも奇跡を見ているような気持ちです。
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