地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2015年09月号 vol.1(7)

「事例から学ぶ疫学入門」 第1回:漢方薬を飲んだら風邪が治る?

2015年08月16日 13:14 by syuichiao

 根拠に基づく医療、すなわちEBM(evidence-based medicine)とは臨床における医療者の行動原理であり、臨床判断を決定する際の思考プロセスの一つです。

 EBMのバイブル「Evidence-based Medicine;How to practice and teach EBM 4th ed」には「EBMには医療者の臨床に関する専門知識と、患者の個々の価値観やその環境に、最良の研究データ(科学的根拠)を統合することが求められる」と書かれています。1)この最良の研究データを科学的根拠などといますが、具体的には臨床に関連する研究のことを指しています。もちろん、動物実験などから得られる基礎研究からの示唆を全く考慮しないわけではありませんが、人を対象とした臨床研究があれば、それを優先的に参照するというのがEBMのスタンスではあります。

 臨床研究とは何でしょうか。これを僕なりに定義すれば、「人に対して、ある要因が作用すると、その後どのような影響を与えるのかということ検討する研究」とまとめることにします。ある要因、とは例えば医薬品であったり、手術であったり、アルコールの摂取や喫煙といった生活習慣であったり、人体に影響を及ぼす因子のことです。そしてその要因に曝露(医薬品であれば服用)され続けることで、いったいどんな影響があるのかを検討するという事です。言い換えれば、ある要因と人に現れた影響(疾患の発生等)との間に因果関係はあるのか、という事を検討するのです。これは公衆衛生という分野の科学的思考の中核をなす、疫学(epidemiology)という学問の定義と類似しています。疫学は簡単にいえば病気の発生に関する学問です。疫学は人間の集団における健康状態とそれにかかわる要因の分布や規則性を明らかにすることが目的です。その目的達成のための手法が臨床研究(疫学的研究)だといっても大きな誤りはないでしょう。(臨床医学分野では特に臨床疫学などと呼ばれます)EBMのベースとなる考え方はこの疫学的思考に支えられています。

 本連載では、「事例から学ぶ疫学入門」、というテーマで、より身近な問題について疫学的な視点で考察を示しながら、健康問題や地域医療について考えていこうと思います。第1回目は「漢方薬を飲んだら風邪が治った」という事例をもとに、薬と治癒の"関連”について考えていきます。

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