地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2015年09月号 vol.1(7)

古いけれど新しい、ちょっと不思議なリチウムという薬

2015年08月16日 13:03 by 89089314
2015年08月16日 13:03 by 89089314
 皆様はこの記事をどのように読んでいますか?

 きっとパソコンやスマホから読んでいるのではないかと思います。それらに必ず使われているのがリチウムを原料としたリチウムイオン電池です。特にスマホやタブレット、ノートパソコンだとバッテリーとしてかなりお世話になっているはずです。もちろんデスクトップ型にも、電源プラグを抜いた時でも最低限のプログラムを保持するため、マザーボード(CPUやメモリ、ハードディスク等を接続する、パソコンがパソコンであるための最も主要な基盤)には小さなリチウムイオン電池が入っています(これが電池切れすると停電や移動の時に時計が狂ったり、最悪は起動しなくなります)。
 それから、最新の電気自動車やハイブリッド車は大容量のリチウムイオン電池を搭載しています。さらに、工業的にはセメントの強度やガラスの融点を調整するために混ぜられることもあります。純粋なリチウムというのは金属の一種で、水に浮くほど軽いのですが、極めて反応性が強く(実際に水に浮かべたら爆発します)、そのままの姿で目にすることはありませんが、化合物として色んな形態で存在し、あるいは利用されているのです。
 
 

 ついでに言うと、この暑い夏、海や川に飛び込んだとしたらさらにリチウムに囲まれることになりますよ。濃度としては非常に薄いんですけど、地球上のリチウムの大部分は海水中に存在していると考えられています。ごく微量で地域差が大きいようですが、水道水にも含まれています。
 リチウムは鉱石としては世界的に非常に偏在していて、採掘量も少なく、日本はリチウムを100%輸入に頼っているため、いわゆる「レアメタル」の一つとして外交問題になったこともありました。しかし、日本では日本原子力開発機構が世界で初めて海水中からのリチウムの抽出の技術開発に成功したとのことで、今後は自国で賄うことが期待されています。
 ところで、なぜ原子力開発機構?という疑問があるかもしれませんが、実はリチウムは核融合反応(未来の原子力発電への応用)における非常に重要な用途があるんですね。しかしそのために、リチウムは核兵器(水素爆弾)の原料でもあって、実際に20世紀後半の世界のリチウム需要のほとんどは核兵器のためだったという歴史もあります。
 一方で、リチウムは高校の化学の教科書では「鮮やかな赤」の炎色反応でおなじみですよね。あれ、花火に使われているんです。ドーン!と爆発するなら平和に夏の夜空を彩っていただきたいものです。

 さて、全然違う話から入りました。このように身の回りにたくさんあるリチウムですが、医療向けの用途もありまして、本題はもちろんその「炭酸リチウム」のお話です。これは精神科領域では古くから非常におなじみの薬ですが、作用機序も未だにはっきり分からないし結局何なのかよく分からないという話もお聞きしますので、薬剤師視点からになってしまいますが、エビデンスを踏まえて簡単に効果と副作用について説明してみたいと思います。
 精神疾患を抱えながら地域で暮らす人が増えつつあり、また高齢化で様々な身体合併症を抱えた人が増え、またリチウムの良い適用である双極性障害の認知度も高まりつつある昨今、地域医療の領域でもリチウムという薬を知っておくと良いかもしれません。

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