地域医療ジャーナル ISSN 2434-2874

地域医療ジャーナル

2015年10月号 vol.1(8)

「子どもをデザインする親」たち

2015年12月18日 14:41 by spitzibara

 8月号で、重症障害児に子宮摘出と乳房切除ならびにホルモン療法による身長停止が行われた米国のアシュリー事件を紹介しました。そのアシュリー事件の論争で最も鋭い批判を展開したのは、アルバニー大学大学院の法学教授で、ユニオン大学院とマウントサイナイ医科大学生命倫理学コースの教授、アリシア・ウーレットでした。

 ウーレットは一般メディアとネットでの論争が下火になりアカデミズムに舞台が移った2008年に「成長抑制、親の選択と障害のある子どもたちの権利――アシュリー・X事件からの教訓」1)という論文を書いて、アシュリーの事例での倫理委員会の検討を強く批判しました。そして翌2009年には、射程をより広く取って「子どもの身体に及ぶ親の権限を改造する」と題した論文を書きます2) 今回の私の記事のタイトル「子どもをデザインする親」とは、この論文でウーレットが援用している「ハーバード大学白熱教室」で有名なマイケル・サンデルの表現です。サンデルは、子ども自身のニーズとは無関係に自分の目的によって子どもの身体に手を加えて改造しようとする親のことを designing parentsと呼びました。

 この論文において、ウーレットは「親が子どもに肉体改造を行った」事例として、アシュリー事件を含め4例を挙げています。アシュリー事件以外の3例は以下です。

① 整形外科医がアジア系の女児を養子にしたところ一重まぶただったので、米国社会では眠そうに見えて見栄えがしないという理由で、手術で二重まぶたにした。

② スポーツ選手にしたいという親の期待から、正常な身長の子どもに成長ホルモンが使われるケース。

③ 12歳の女児に親の要望で脂肪吸引術を行った。1年後に効果がなくなると親は胃のバンディング手術を希望した。米国の医師らが断ると、メキシコに連れて行った。

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