「心身一如」という言葉があります。元々は仏教用語ですが、一言でいうなら「心と体は不可分である」ということですよね。
 私たちは普段、体の調子がどこか悪ければそこを治療してくれる病院にかかったり薬を飲んだりしますが、その時に心の調子を気にかける人はあまりいないかもしれません。逆に、ひどく落ち込むような悩みを抱えているからといって忙しい仕事や家事を積極的に休むような人もあまりいないように思います。
 私たちは、ついつい普段の生活では、心と体を別のものとして考える傾向にあるといえます。

 しかし、よく考えてみると、何か重大な病気や障害を抱えてしまった人が心の調子を崩してしまうことは、よくあることで仕方のないことだと多くの人が考えるでしょうし、逆に、心の不調が体の不調として現れることがあるというのも多くの人が納得するところでしょう。
 例えば、がん患者におけるうつ病の有病率は、診断基準にもよりますが、一般の健康な人と比べて2〜3倍に達することが示されています。

Caruso R, et al.
Depressive spectrum disorders in cancer: prevalence, risk factors and screening for depression: a critical review. 
Acta Oncol. 2017 Jan 31:1-10. 
PMID: 28140731.

 また、うつ病と診断された患者のうち身体症状のみを訴えた割合は、医療機関によって大きく異なるものの、45〜95%とかなりの割合にのぼるという報告があります。

Simon GE, et al. 
An international study of the relation between somatic symptoms and depression. 
N Engl J Med. 1999 Oct 28;341(18):1329-35. 
PMID: 10536124.

 このように、体の問題で心が不調になることもあれば、心の問題で体が不調になることもあるというのは、このような疫学研究を踏まえるまでもなく私たちは当然のこととして認識しているのではないかと思うのですが、では、「心の不調のせいで新たに身体的な疾患を発症してしまう」としたらどうでしょうか。特に、がんになればうつ病になりやすいのは理解できても、うつ病になるとがんになりやすくなるとしたら……
 実は最近、そのような報告がいくつかあるのです。今回はそれについてお話ししてみたいと思います。



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