岡山で家庭医をしている横田雄也と申します。
私の連載では、日常生活や医療現場の様々なトピックを、できるかぎり多角的な視点で考え、発信していこうと思っています。
個人ブログ(https://yktyy.hatenablog.com/) では、主に読書からの学びや、家庭医療・総合診療に関する内容を発信していますので、よろしければご一読ください。
さて、今月号の地域医療ジャーナルは、ノセボとプラセボがテーマとなっております。
他の記事ですでにノセボやプラセボについて解説されておりますので、詳しくはそちらをご参照ください。
簡単に説明しておくと、ノセボは、患者が副作用を気にかけることによって、偽薬でも副作用が生じたり、薬剤の効果が減少したり、副作用の頻度が高くなるといった効果のことです。
最近発表されたものを挙げますと、脂質異常症の治療として使用されるスタチンに関する研究(1)で、アトルバスタチン20mg/日またはプラセボ薬投与中に、それぞれの患者が報告した筋症状の有病率や重症度、患者のQOLに関し、有意な差がなかったとのことです(詳細については原著をご参照ください)。つまり、スタチンの副作用のひとつである軽い筋症状が、実はノセボなのではないかということです。
この研究で取り上げられているスタチンだけでなく、医療現場ではノセボとみられる事象に遭遇する機会が度々あります。そして往々にして、医療者はこのノセボに対して陰性感情を持ってしまいがちです。患者の症状がノセボなのだとわかると、「気のせい」や「思い込み」という言葉とともに、ないがしろにしてしまう場面も見受けられます。
ノセボは気のせいや思い込みなのでしょうか。そして、たとえ「気のせい」や「思い込み」だったとしても、ないがしろにしても良いものなのでしょうか。
そこで今回、ノセボを「疾患(Disease)」と「病い(Illness)」の視点で考えてみます。
※参考文献
(1):Emily Herrett, et al. Statin treatment and muscle symptoms: series of randomised, placebo controlled n-of-1 trials. BMJ. 2021; 372.
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